ピロリ菌に感染していたとは!             

  その日(11月27日(木))、出社後会議前のトイレで便が黒色なのに首をひねり、昼食後に又コールタールのような便が出て、これはいかんと、人間ドックなどで行きつけの住友病院の消化器科に飛び込んだ。 一時間後の採血結果は「赤血球数・血色素量などが許容下限以下でかなりの貧血状態」て゛、緊急入院を要す、との診断であった。 自覚症状は無く、大袈裟な!とは思ったが、ここは医師に従う以外になく、直ちに入院、止血剤の入った点滴を開始する事になった。 その後寝たままの連続点滴が四日間続き、それが終了して流動食になったのは月曜日の夕食からで、翌朝の再採血の結果は「貧血状態の進行は停まっており」で、火曜日の朝食後の退院が許可されたのだった。 
  実は二十年以上前に十二指腸潰瘍をやった際、幸いにして内科的治療で回復出来たが、それ以来飲み薬を欠かした事がなかった。 近所のクリニックに行きそびれて 約一週間にわたって薬を飲み損なったのが今回の原因であったかと思うが、そんな事は今まで何回もあった事であり、今回の突然の下血は腑に落ちない出来事であった。 退院一週間後の再訪でピロリ菌の感染を告げられたが、その感染も最近の事でなく、一般的には幼少年期の衛生状態の悪い時代の事であろうと聞き、それが何故今活動を開始したのかと、これも又腑に落ちない事ではあったが、指示に従って除菌を行なう事となった。 
  図書館で借りたピロリ菌に関する数冊の参考書の要旨は次の通りである。 過去百年にわたり「胃の中に細菌が存在する」との学説が出たり引っ込んだりはしていた。 1954年米国の学者パルマーが多くの調査例から「胃に一切の細菌は存在しない」と発表しドグマが形成されて行った。 1979年豪の病理学者ワーレンが「強い胃炎の患者の粘膜表面に多数のらせん菌が存在する」と報告。 同じく豪のマーシャルが1981年にらせん菌の分離培養に成功し、これを自ら飲んで強制的に急性胃炎を起こさせ、胃の粘膜にピロリ菌の発現を確認。 以上が歴史であり、らせん形(ヘリコ)・細菌(バクテリア)・胃の十二指腸につながる幽門部(ピロリ)から正式名称が1988年に「ヘリコバクター・ピロリ」となった。 この菌は尿素(NH2)2CO2を分解する酵素を多量に持っており、胃の粘膜中に一定量含まれる尿素を分解して発生させたアンモニアNH3で自らの周囲の酸度を下げる事が出来る為、強い酸の中でも生き長らえるそうな。 一方、このピロリ菌は胃の粘膜細胞から粘液を切り取って食べてしまうそうで、これがひどくなると粘膜下層や筋層が潰瘍になる。 日本人の場合四十歳以上で感染者が80%に達するそうで、消化性潰瘍になる人はその中3%、胃癌になるのは0.3%、大部分の人はピロリ菌と共存しているそうであるが、「ピロリ菌感染潰瘍患者は胃酸分泌阻害剤に抗生物質を併用して除菌すべし」というのが最近は世界的合意になり、我国でも2000年11月から保険適用が認可されたそうだ。
  さて今日から始めた除菌。 朝夕三種類の錠剤を食後に飲むだけだが、何しろ長年住み着いていた奴を駆逐するわけで副作用も要注意との事。結果は又後日報告とします。