年末土佐旅行(その三)

      
四国に行ったら最後の清流四万十川まで足を延ばしてみたいと誰でも思うのではないでしょうか。高知県東津野村不入山(いらずさん 1336m)に源を発し、蛇行しながら多くの支川を合わせ、流路延長196km(四国第一、全国第十一位)を経て中村市下田から太平洋に注ぐ。四国西南地域の母なる川であり、日本最後の清流として全国から多くの観光客を集めている。また自然と共存する伝統漁法により獲られた鮎・うなぎ・川えびなどの川の幸も豊富である。という案内書に誘われて我々もまずその源流点を訪ねる事とした。高知市の南西、須崎市から197号線を西に向かい船戸を右折してしばらく行くとかなり急な山道となる。不入山の東斜面でいよいよ行き止まりとなり、そこは四万十川源流点である。石碑を写真から転記すると次の通り。
四万十川源流碑建立由来――不入山は神妙な霊山として人々の深い尊敬と信仰を集めて今日に至っている。その不入山より湧き出た一滴の水が一筋の流れとなり川となってそれぞれの地域の文化を育み乍ら196粁の大河を形成して太平洋に注いでいる。この蒼き流れの四万十川こそわれらの母なる川である。此の流域に暮らす四国西南地域の人々は美しきシ・マムタの天恵に感謝し亦その脅威と戦い乍ら今日を生きている。我々は此の川を創造した不入山を限りなく崇拝すると共に清流の恵に感謝し此の川が日本最後の清流として永く人々に愛され親しまれ不変の生命を持ち続ける事を願って此の碑を建立するものである。平成五年七月建立 四万十川源流保存会撰 高知県知事 橋本大二郎
さてここから四万十川沿線下りを始める。東津野村から大野見村・窪川町・大正町・十和村・西土佐村そして終着は中村市である。山裾を右に左にハンドルを切りながら流れに沿って行くのだが、上流の谷川はあちこちで干上がり、岩と河原だけになってしまったところが多い。流域の国有林は80%が人工林にその姿を変え、今その約70%は針葉樹のヒノキだと言われる。もともとは照葉樹林の山が多く森林へ降った雨は、落葉が腐植し厚く堆積したスポンジのような土壌に蓄えられしだいに深く浸透し、そのため雨水はゆっくり流出したのだが、今は保水能力が低下し降水は一気に流出してあとに水枯れ現象が起きるという。そうは言っても中流下流になると他では見られない豊かな水量であり、それぞれに個性のある21本の沈下橋とともにどれも写真に収めたい風景である。最下流の佐田沈下橋と一つ手前の三里沈下橋の間で屋形舟に乗ってみたが、船頭の話だと、増水の際水位は沈下橋の上数mになるとの事であり、そんな事が年に数回あるそうな。でも今は静かな流れであくまでも澄んでいて舟べりからは川底がはつきりと見える。四万十川の魚類相は100種を越えるそうで漁法も伝統的秘技が残っていて、アユの投網・地引網なんてのがあるそうだ。一時間の屋形舟遊覧を最後に四万十川探訪は終わったが、最後の清流の評判を裏切らない山なみと流れであった。