日中接近が最重要?続          

中国側の対日姿勢変化の兆しが産経新聞で報じられて、それは結構な事であり歓迎!と「日中接近が最重要?」(H.15.6.22)に書きましたが、その際今まで対中平身低頭でやって来たメディアはこれからどうするのだろうかと皮肉を付け加えて置きましたところ、数日後の朝日新聞に、船橋洋一の署名で朝日の見解が示されました。「中国は辛抱強く待つ」という見出しなのですが、相変らずの事で何を言いたいのか理解し難い文章です。私なりに読み解いて紹介します。
  まず中国内の論戦ですが(中国に論戦などないと思っていましたので、ちょっと驚きましたがそこらまでは進歩して来たらしい)、一方は産経が紹介した中国人民大学の時殷弘教授ら対日新思考派で、彼らは同時に日本問題の門外漢なのだそうな。他方日本問題の専門家と言われるグループがあって代表は中国社会科学院日本研究所です。この後者の今まで対日強硬派であった専門家らが門外漢らを罵倒しているのかと思うとそうでもなく「95年以降、日本に右傾化傾向が現れた事は強調しておかなければならないが、歴史問題を日中関係の政治的基礎にするべきではない」などとかなり軟化しているようで、日本専門家たちも、新思考の潮流を無視できなくなりつつあるようである、と船橋氏は伝えている。かと言って強硬派が新思考派に同調しているわけではもちろんなく、SARS後遺症も含め難しい局面にさしかかっている経済の立て直しには日本からの投資が更に必要だという現実を理解しつつも、日本の対中毅然路線をそう簡単に勝利させるわけにいかないというジレンマの間で彼らは行きつ戻りつしていると解説する。
現下の中国内の両派の言い合いについては高見の見物をしていれば当面いいと私は考えるが、船橋氏はどういうわけか最後にこう書く。「中国の「歴史カード」乱発が、日本国内の対中関係の改善を願う層まで白けさせて来た事は否めない。中国がその愚に気づいたとすれば大いに前進だ。ただ、歴史問題の克服は、相手に言われる前にこちらが自らのあるべき自画像と国益にてらして取り組むべき事柄である。そもそも、正しい鏡を持ってこそ安定した安全保障政策も生まれる。」 前半はよくわかるが,後半の[ただ]以降は、悪文で分かり難いものの、あえて言えば、前半とはまったく反対の事を言っているのではないか。対中毅然路線を放棄しろ、中国の対日強硬派を追い詰めるな、と言っているように私には読める。経済で対日協調が不可欠としても、歴史問題では譲れない一線が中国にはあるのだから、それを日本は理解してやれ、と言っているように読める。国益国益が激しくぶつかりあう現在の世界政治の中で、こんな柔な話があるだろうか。
憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して・・・・・」とあるが、これは全く現状に合わないと国民の多くが考えているにも拘わらず中々改正が出来ないのは、読者をミスリードするこのようなメディアが依然としてのさばっているからだ、と八つ当たりしたくもなる。朝日を読む時は是非併せて産経新聞を読んで比較して下さい。