斜里岳登降十時間               

今年も札幌での株主総会を終えて夕刻女満別へ飛び、前前日から来ていた家内のレンタカーで、清里町の町立緑清荘にたどり着いた。念願の斜里岳登山が目標。翌早朝5:20出発、登山口(清岳荘)に車をおき、スタートが6:15。かなり水量のある一の沢川に沿って行くルートだが、もう十五年になる愛用のドイツ製登山靴の硬質ゴム底を先日張り替えたばかりのせいか、安心して水中の石を頼りに朱のマークに従って右岸左岸と渡りを繰り返して進む。「下二股」を過ぎると一段と急勾配となり、場所によってはロープか鉄鎖が用意されているので、これを手繰りながら進むのだが、さすがに緊張の連続。次々と滝が現れるがそれを下流から書くと、水簾・羽衣・方丈・見晴・七重・竜神・霊華となる。「上二股」を過ぎると水も枯れて来て源頭部の登りとなる。ダケカンバの林を過ぎ、胸突八丁、の標識が見えると視界が開け周囲にハイマツが多くなる。最後のガレ場を喘ぎながら登りきると「馬の背」と呼ばれる山頂稜線に出、頂上が見える。一休みして急な尾根を行き犬小屋ぐらいの斜里岳神社を過ぎ、岩と砂の礫地帯を一気に登ると広い頂上に到達、11時過ぎなので5時間掛かった事になる。ガイドブックでは休憩を入れずの登り時間は3時間10分なので、まずまず。快晴だが眼下は雲海が厚く360度覆っていて、見えるのは遠くに頭を出している羅臼岳だけ。山頂からの展望は、案内書によれば、地の果て知床に相応しく、足元(15km先)にオホーツク海があり知床の山々(知床岳・硫黄岳・羅臼岳・海別岳)の向こうに国後島が浮かんでいる、西を向けば大雪山系の山々見えるのだそうだ。
 知床はアイヌ語のシレトクが語源、大地の行き止まりという意味で、知床岬の先端部をそう呼んだのだそうだ。半島は600万年前から続いた海底火山活動と50万年前以降の陸上火山活動で形成されたとあり、長さ70km幅は基部で25km、東側は根室海峡に面しわずか25km隔てて国後島、西側はオホーツク海に面し冬になると流氷が南下して沿岸を埋めると。知床半島を巨木とすれば根にあたるところに斜里岳は独立峰のように聳え、釧網本線清里町駅あたりから見ると長々と優美な裾を引いたコニーデ型の成層火山であると。
 早朝出掛けにコンビニで買ったおにぎりで昼食を済ませ12時過ぎ下山開始。馬の背経由上二股まで一気に下り左に折れる。沢下りはいかにも危険なので距離は長いが安全な隣の尾根道を利用するわけだ。ほぼ水平に行って熊見峠で休憩、ここからは斜里岳山頂の溶岩ドームの構造が双眼鏡で詳しく観察出来るとあるが、ガスで残念ながら頂上までは見えず。代わりに高山植物の写真が何枚も撮れたので書物で照らし合わせてみると、みやまおだまき(紫)、ちんぐるま(白)、うこんうつぎ(黄)、はくさんちどり(紅)などであろうか。そこからは徐々に急降下となって行き下二股で朝の道にようやく合流し、清岳荘に戻って備え付け登山届に「下山16時」と記入して一件落着、雨飾山の時と同じく十時間であった。登山届帳を見ると、今日入山したのは団体(大阪23人、千葉28人)を併せて106人のようだ。今回わがチームは平均以下ではあったがラストではなかった。めでたし。