五百旗頭(いおきべ)教授講演要旨

  神戸大学法学部教授 五百旗頭真氏の「イラク北朝鮮アメリカ」と題する講演会が8月6日大阪倶楽部で開催された。同感する所が多く、断片的だが要旨をまとめておく。

1)戦後日本の研究を続けて来て、吉田茂賞を受賞した「戦後日本外交史」を1999年に出版したが、最近迄ハーバードに客員研究員として滞在し、これを英訳しながら米国の人々と意見交換をして来た。近々「英文:戦後日本外交史」が出版される事になっている。それにつけても、戦後日本人は大変立派な仕事をして来たと思うし、学校で日本戦後史を教えないのは大きな間違いである。
2)グローバルな時代になり外交も一段と重要になった。それが国の存続に係わる時代になった。甘い事を言ってばかりではダメ、かと言って荒っぽくてもダメ、政治的賢明さとでも言うべきものが必要。米国の軍事力は抜群で圧倒的だが、にも拘わらず世界を支配出来ない。徳のない力ではいけない。
3)クリントンは国内経済中心にのんびりゆっくりやろうという主義だったが、それに反発し、そんな甘い事でどうする!、と発言を強めてきたのがいわゆるネオコンで強気の政策を進めている。イラク開戦賛成は確かに米国全体では70%あるが、しかしハーバードでは70%が反対である。やはり正当性という事は大切。
4)氏のイラク戦に対する考え方は次の三原則だという。a)戦争はすべきでない b)始まったら米国支持 c)戦後復興に協力。 矛盾するようだがこれはやむを得ない。小泉首相イラク戦争支持は良かった。もし不支持なら日米関係は険悪化しただろう。北朝鮮に脅されても米国は助けてくれまい。「日本への攻撃は米国への攻撃と見なす」という米国の発言は大きなインパクトを北朝鮮に与えている。 
5)佐藤首相は不人気なベトナム戦争を支持したが、これを多として米国は沖縄返還で応えた。対米従属! と非難する人が多いがそれは一面的見方であり、貸しを作ってから返してもらっているのが戦後の日米関係である。     
6)クリントンでは日本は困る。クリントンは中国へ行って握手し一緒になって日本をあざ笑った。これに対しブッシュ政権アーミテージは「日本は友人、中国は競争相手」と明言して日米同盟の確固たる事を誇示している。
7)中国が最近北朝鮮をたしなめ始めている。北が核を保有すると言う事になれば必ず日本も核保有に進むと見る。何としても中国はそれを阻止したい。日本が核を保有し、憲法を改正し、日米が同盟を更に強化する方向に進む事は中国にとって最悪のシナリオである。