近畿最高峰「八経ヶ岳」征服      

 9年前に奈良・三重県境の日出ヶ岳(1695m)に登った事があるが、大台ケ原ドライブウェイで山頂近くまで行けてしまい、登山と言うよりは山頂周遊のハイキングに過ぎなかった。その時、西方にある大峯山吉野山から熊野へ南北150kmにわたり1200m以上の山々50座の山塊)を遥かに望みながら、その中心で近畿の最高峰「八経ヶ岳」(1915m)にいつか挑戦しようと思ったものだったが、山小屋泊はいやという家内の条件をクリヤーし難く、延び延びになっていた。 ようやく出来上がったのは、朝早く車で近づける所まで行って頂上を往復し近くの旅館に泊まって翌日帰る、という案だ。 
ところが、予報が好天で秋深まる紅葉の連休とあっては、次から次と電話してもどこでも満員と断られ、遂にワゴンの車中泊を覚悟し、宝塚を11月1日午前3時20分に出発。名神近畿道西名阪道と乗り継いで郡山ICで降り、24号を南下、橿原市で169号に、下市町で309号に移って登山口近くの駐車エリア(行者還トンネル西口−標高1094m)に到着したのが6時20分。 最後の10kmは川迫川渓谷沿いのくねくね曲がった片側絶壁の細道で、落石でなく落盤注意が頻繁にあり、対向車が無いからいいようなものの、簡単には通り抜け出来ない山道だったが、丁度3時間とはかなり順調な現地到着だ。 
既に十数台の車が並び多くはスタートしているようだが、我らは慌てず6時50分発とする。 谷川沿いに少し行くが直ちに急坂となり、ブナ・カヤ(樅のような)・カエデに混じってシャクナゲが茂り、木の根が縦横に走る山道を、朝日に輝く隣の尾根を見上げながら一歩一歩行き、標高差400mを登り切って尾根道に出るとそれが大峰縦走路(大峰奥駈道)である。 一時間の水平行の後、鬱蒼と茂る樹林の急坂を喘ぎながら登り、標高差300mで弥山(みせん―1885m)の手前の山小屋に到達する。 山小屋は200人の宿泊が可でトイレは水洗。小休止の後最高峰に向かうが、途中トウヒ・シラビソの原生林が独特の景観を見せ、ネットで囲われた領域があるのは大峰山の代表的名花オオヤマレンゲの群落を鹿の食害から守る為とある。 八経ヶ岳には11時10分着。 所要時間4時間20分。 富士に次ぐ高峰として広く知られていたとは源氏物語にもあるそうで、開山は655年役小角(えんのおづぬ)22才の時と言われ、役行者法華経八巻を埋めたというのが山名の由来と伝えられる修験道の霊地である。 「吉野熊野国立公園日本百名山大峰・近畿最高峰」の標示をバックに記念撮影。 7km南方に1800mの釈迦ヶ岳、その手前に1805mの仏生ヶ岳、振り返って北方には遥かに大普賢岳山上ヶ岳が望めた。 二度と来る事もあるまいとたっぷり小一時間の滞在の後下山。 最初と最後の急な下りは要注意であり二本の杖で慎重に行く。スタート地点には16時05分に帰還、9時間15分の久しぶりの大遠征であった。
渓谷の細道を戻って天川村洞川(どろがわ)へ。 この集落は大峰山に入る行者の滞在地として1300年も前から賑わう霊山の玄関口。510円の温泉に入り、広場の駐車場でワゴンの後部座席を倒して一夜の寝どころを作る。先に寝込んだ方が勝ちと言うものだ。