超音波内視鏡                           


人間ドックでの腹部超音波検査で毎回「左腎嚢胞」「胆嚢ポリープ」要経過観察、と出てくるのだが、この度、機会があって超音波内視鏡検査と造影MRI検査を経験した。MRIは痛くも痒くもないが、前者は胃の中を見るだけの単純内視鏡と違って先端に超音波振動子が装着されており、しかも今回は胃を通過し十二指腸の中間まで侵入するという事で、通常より苦痛が伴うと注意書にはあったが、実際にもさすがに鬱陶しいものだった。しかしこの種の医療機器の進歩は目を見張るばかりであり、例に依って若干調べてみた。
 プロジェクトXでも取り上げられたが、(1) 1950年に東大とオリンパスの共同研究によって開発された胃カメラが軟性内視鏡の始まりである。撮影レンズと幅5mmのフィルムと豆ランプが管の先端に装着されているのだが、これにより胃癌の早期発見が可能になり、その治療が飛躍的に進歩した。(2) 1960年代に入って光ファイバーが登場し、胃の中を直接見る事が出来るファイバースコープが米国で開発され、爆発的に普及した。現在、単繊維の直径は5ミクロン、本数は数千から数万だそうだ。この内視鏡の先端には5個の穴がある。まず照明用が2つ、送気送水管が1つ、対物レンズのあるイメージガイド管が1つ、最後が鉗子チャンネルで、生検鉗子による組織の採取・バスケット鉗子による異物の回収・スネアによるポリープの切除など目的に応じて治具を挿入する。(3) CCD固体撮像素子がベル研究所で発表された直後から、これを内視鏡の先端に組み込む研究がオリンパスで始めれた。これはビデオスコープと言われるが、CCDの小型化に技術的問題が残されていて、管径が若干太く、直径10mmである。従ってこれは消化器系で普及しているものの、気管支・胆道・血管など細い管腔用はファイバースコープの独壇場である。
 さて超音波技術であるが、実用的な最初の応用は潜水艦探知だったようだが、医学では1942年の脳腫瘍の検出・1958年の胆石の検出・1964年の腹部診断と着実に進歩して来たようである。組織内の音速に差のある部分から反射が戻ってくるわけで、生体組織の硬度の変化が検出出来る。粘膜表面を見ただけでは分からない内部の様子が明らかになるわけだ。体外からの超音波発信で、胎児の発育状況判断・心臓の診断・結石有無検査などは当然可能だが、膵臓など胃の裏側にある臓器については、胃には空気があって超音波が通過しない為、体外からは困難で、超音波振動子を膵臓の近くに持って行く必要があり、軟性内視鏡の先端に超小型の超音波診断装置が組み込まれるようになったわけである。しかも前述のように、十二指腸まで侵入させるわけであるが、二人の先生の「これかな?こっちかな?」と言いながらの操作に対応して、先端が十二指腸(かどうかは分からないのだが)の中で動いているのが微かに感じられるのは何とも奇妙な初めての経験であった。
 因みに胃から大腸までは、胃・十二指腸(25cm)・小腸(空腸・回腸に分かれるようだが合計で数m)・大腸(1.5m)だが、その中のみならずその周辺まで検査が出来るようになったわけで、感動すると共に、片や医療費は上がる一方だなと考えさせられもした事だった。