横浜山下公園の氷川丸                  

 ペリーの再来航上陸地探索の為に横浜開港資料館を訪ねたついでに、そこから数分の所に係留されている氷川丸を見に行く。係留を知ってはいたが乗船しての見学は今回が初めてだ。もらったパンフレットを要約すると氷川丸の略歴は以下の通り。日本郵船の社船として三菱横浜造船所にて、655万円(現在貨幣価値120億円)で建造され1930年4月竣工、埼玉県氷川神社から船名を授かり直ちにシアトル向け処女航海の途につく。全長163m・船幅20m・総トン数12,000t・最高速力18.2ノット・合計船客定員331人・乗務員126人。オーシャンライナー全盛期の優美な船型と、一流シェフの料理を始めとする最高のサービスとが相まって、「北太平洋の女王」と呼ばれる。1941年大戦勃発と共に日本海軍に徴用され、主として南太平洋海域において病院船として使命を果たし、終戦後は復員輸送に従事。改装後1953年には太平洋を横断する唯一の本格的客船として、シアトル航路に復帰、フルブライト留学生・海外公演の宝塚歌劇団を乗せて話題となる。戦前戦後を通じ北太平洋を238回横断し、延べ25,000人余の乗客を運んだが、1960年引退し翌年横浜港山下公園に係留される。2003年には、造船技術史上・建築史上・近代史上の価値が認められ、水面係留船舶としては全国で初めて横浜市指定有形文化財に指定された。
 さて黒く塗装された船体の鋼板だが、幅1.5m・長さ10m程度と推定され、全てリベットで接合されている。残念ながら鋼板の厚みほか船体構造は不詳。肝心のエンジンについてまとめておく。スクリューは左右二個あってそれぞれは4気筒ディーゼルエンジン2基で駆動されていて総馬力は11,000だ(即ち700hp/シリンダ)。エンジンのシリンダ径が680mm・ピストンストローク1,600mm・4サイクル複動・回転は110rpmで、さすがにこれはデンマークのバーマイスター&ウェイン(B&W)社からの輸入品。エンジン断面図が船内に掲示されていたがパンフレットはなく、右図は当該品のではなく百科事典の一般的舶用ディーゼルエンジン説明図である。下のエンジンルームは入場時のパンフレットにあった写真であり、その巨大さを想像して頂けるだろうか。最近の最高値ではシリンダ径980mm・出力は7,780hp/シリンダになっているようで、12シリンダで93,360hpというのが次世代型コンテナ船用主機関だそうだ(MAN B&W Diesel 社で開発された新型エンジン:三井造船ホームページ)。 液晶とか携帯ばかりがメディアで騒がれるが、私はやはりこの種の重厚長大が好きだ。