対中謝罪は不必要                    

 胡錦涛政権に変わって「対日新思考外交」が打ち出されそうな気配が伝えられたのは丁度2年前だったが、その頃の産経新聞切り抜きを取り出して見てみると、その中に「ロシアのサンクトペテルブルクで開かれた日中首脳会議で、胡錦涛国家主席小泉首相靖国神社参拝など歴史問題への具体的言及を避け、未来志向の協力関係を強調、日中関係は改善に向け動き出した。その背景をめぐって、胡政権に中国の戦略的利益のため「中日接近」を最大の外交任務にせよ、と政策転換を促した学者の論文が今、中国国内で脚光を浴びている。」で始まる北京発の記事があった。当時、江沢民政権のしつこい反日姿勢にうんざりだったので、この記事は大変新鮮に見えたし、いよいよ中国も変わり始めるかと大いに期待したのだったが、その後の推移は私の期待を完全に裏切るもので、大勢の新思考学者が国外追放されてしまい、何人かは今米国で活動しているようだ。
 この4月中国各地で、日本の国連安保理常任理事国入りや一部の歴史教科書に反対する反日デモが暴徒化し、北京の日本大使館が投石を受けるなど一連の由々しき破壊活動が起ったが、中国側の謝罪は全く無く「侵略という歴史問題に対する日本側の誤った態度に不満を持った自発的な行動で、中国側に責任はない」という公式見解が出され、2年前の北京発の記事を書いた同じ記者は今度は次のような記事を送って来た。「胡錦涛主席は、ジャカルタでの小泉首相との首脳会談で歴史問題などでの日本の態度を批判、靖国神社参拝や歴史教科書問題で日本側が「歴史への反省」を行動に移すよう要求した。日本側に非があるかのような不思議な首脳会談だったが、しかし胡主席の勝利とは言えない。国際的ルールと常識に反した暴力デモに遺憾の意も表明しなかった事で、その指導力への疑問を抱かせたからだ。」この記者(伊藤正氏)も同じく中国の若い新政権に期待し裏切られたようだが、中国国内は「一党独裁の資本主義」という大きな矛盾がマグマのように拡大して来ているようで、容易ならざる前途と推察される。現に英タイムズ紙は社説で「もし暴徒の心理を煽り続けるならば、中国指導者は究極の敗者に堕する事を知るべき」と警告している。
 ところで、四月二十二日のジャカルタでの演説で小泉首相が「植民地支配と侵略によって多大の損害と苦痛を与えた」として、「痛切なる反省と心からのおわび」を表明したと聞いて、私は「又か、余計な事を言うなよ」と舌打ちしたのだが、実際は謝罪部分はわずか数行で、大半が戦後六十年の日本の実績、特にアジア・アフリカ地域への開発援助などを行なって来た実績をアッピールするものだったと知ってやや安堵したものだった。中国との間で何事かが起こると直ぐに先方から「歴史問題」が持ち出され、日本側でも、朝日新聞などを先頭にそれが如何にも当然であるかのように代弁主張され、戦後の偏向教育に毒されてそれに迎合する国民がまだまだ多いのを、日頃から残念に思っているのだが、もうそろそろその間違いに気づいてもらいたいものだし、小泉首相には公約どおり毅然として八月十五日に靖国神社参拝を実行してもらいたいものだ。
日清・日露戦争に勝ち、露の南下を押し返して満州に進出し、その後列強に仲間入りした頃の東アジア地図を見れば、各国の勢力範囲が明らかで、英は上海・南京から奥地の重慶まで広大な地域を支配し、独は山東半島を、露は内蒙古から万里の長城までを狙っている。そのような弱肉強食時代の自存自衛の為に、生き残りを賭けた戦争が始まってしまったのだが、勝てば官軍・負ければ賊軍である。日本は二度目の臥薪嘗胆で戦後復興を成し遂げたのだが、勝った中国から、「勝つには勝ったが、酷い目に遭わされたので謝罪せよ、まだまだ反省が足りない。」と、双方納得のODAを含めた実質賠償完了後もしつこく脅されている訳だ。歴史的事実を精査し中立・公平・簡潔にまとめた扶桑社版歴史教科書が一家に一冊備えられるようになり、言われなき脅しに国民一人一人が堂々と反論出来るようになる日が一日も早くやって来る事を念願してやまない。