小泉政治採点                            

 先日大阪倶楽部の定例午餐会で、元経企庁長官・現福山大学教授・田中秀征氏の講演を聴いたが、小泉首相とは頻繁にやりとりがあるようで、演題は「最近の政治と経済」だったのだが、実際の話は掲題であった。道路公団改革の結末がかなりいいかげんで悪評だったし、郵政も同じ調子で糊塗するのではと言われていた頃は、期待していた私も愛想をつかしかけたものだったが、以下、講師の話に依ると小泉首相の郵政改革への執念は並大抵でなく、必死だとの事である。
1. 2大成果:(1)不良債権問題――今年1月に竹中大臣の「バブル経済終結宣言」があったが、事実収拾に向かっており、小泉・竹中でよくやったと思うと。一時は四面楚歌の状況にあったが、二人は打たれ強く、骨太の計画通りやり遂げ景気も回復に向かった。(2)郵政民営化問題――抵抗は多いようだが、抵抗側のスタンドプレーが特定郵便局関係者にそれなりに届けば彼らにとっていいのであって、全体の流れとしては成立する方向に向かっている。
2. 郵政民営化:(イ)20年前から首相は「財政投融資制度を改革しないと日本は潰れる」と主張しており、民営化は極めて強い信念だし執着している。所信表明演説も、特に郵政については自ら書いており、判断力はともかく決断力は昔から大したもので、なんとしてもやり遂げるだろうと。(ロ)入口としての郵貯問題に目途がつけば、次は出口としての特殊法人改革に弾みがつき、公的金融改革に着手可能となる。(ハ)今回の衆院補欠選挙では、特定郵便局長らを民主党に追いやってしまったが、郵政改革を隠さずに前面に打ち出して堂々と訴えて勝った。大組織の支援なしでも選挙に勝てた事の意味は大変大きいと。
3. 破壊者小泉:角栄に繋がる橋本派を解体した。すなわち、(1)建設関係・(2)遺族会関係・(3)特定郵便局関係が橋本派の支援団体集票マシンだが、(1)(3)が崩壊してしまった。後継の総裁は小泉改革を引き継ぐ者であるべき事は当然である。
4. やり残した事:首相はいわゆる小泉改革に時間をかけており、やむなしなのだが、その他の事については官僚まかせが多かった。政策の企画・立案・推進などのルール作りが、官民一体の諮問委員会などがあるものの、未完であり今後の課題である。また外交は手詰まりとなっており、その建て直しが必要と。
 概略以上が講演内容であり、合格点を与えているようであった。H15.12に「屋山太郎の政局展望」なる講演を聴き、屋山氏の結論は「小泉のインチキ野郎」だった事、私自身の感想は『道路公団だけでも族議員が腰を抜かすように徹底してやり、さっさと退任、その方が60年安保の岸総理のように後世の評価は高まるのに』だった事を短文にし、前述のように私も愛想をつかしかけたのだが、田中氏の講演を聴き、昨今の政府郵政法案の提出・不真面目役人の更迭などの動きを見て、「意外にやるじゃん」と若干思い直している。
 そんな時、自民党ご意見番を任じている松野頼三氏の発言記事が目に付いた。見出しは「筋通らぬ総裁公約への反対――[郵政]自民の混乱」で、要点は、?選挙で小泉総裁が国民に掲げた公約をほごにしようとするなど自民党の一部には「政治の常識」が存在しないようだ。全く考えられない。反対なら総裁を党則に則って代えればいい。?反対派の中には民営化の中身より、トップダウン方式の首相の政治手法にかみついている議員もいるが、トップダウンで強引に事を進めるのが指導者のあるべき姿だ。である。
 この辺が常識と思うが、それにしても民主主義は時間がかかるものだ。しかし、内閣支持率がある程度維持されているのをみると、情報公開時代の国民の総意はイコール正解かも知れない。