小泉政権の行方                      

 大阪倶楽部の水曜定例午餐会で、毎日新聞特別顧問・政治評論家岩見隆夫氏の講演があった。演題は『小泉政権の行方』であり要旨は以下の通り。
(1) 衆議院の解散について複数の調査機関の世論調査で、解散歓迎が50%あり、小泉首相支持が解散後にいずれも数%上昇したと報道されており、大方の国民の共感と支持を得ているようで、小泉首相得意の演出が功を奏しているようだ。見せ場は三つあった。(イ)一つは小泉首相説得不成功後の森前首相記者インタビューのTV放映であり、「一時間半も居たのだから寿司ぐらい取ってくれるのかと思ったら缶ビールだけ。つまみも干からびたチーズとサーモンみたいなものだけだった」と怒り心頭に発した様子が何度も写され、土光さんの夕飯のおかずはメザシという有名な話に一脈通じて、これが小泉株アップに繋がった。(ロ)二つ目は閣僚を一人罷免して閣議で解散を決めたこと。今までに、したくても出来なかった総理が何人か居たが、党内多数が反対にも拘わらず初めて成功した。(ハ)もう一つはガリレオに対比したこと。国会は間違っている天動説、自分は正しい地動説だと叫び、ガリレオと同じように郵政改革は如何にも「真理」と訴えた。これらに国民は瞬間的には賛同した。
(2) 政権が取れなかったら退陣すると、小泉首相岡田代表も共に退路を絶った背水の陣の選挙となる。造反者37人を公認せず、郵政賛成か否かの選挙。鈴木宗男がどうなるか、一つの撹乱要因。靖国参拝はしてもしなくても選挙に影響少なし。
(3) さて、選挙結果予想だがこれは全く分からない。定数は480、過半数は241であり、造反者37を除くと現在の自民党は213。民主党現有議員は177自民・民主以外の当選者は約80すこしだから400の議席の自民・民主による争奪戦となる。そこで四つのケースを考えてみる。(イ)自民が単独過半数を取る場合だが、213を一挙に241にするのはかなり難しい。(ロ)民主が単独過半数獲得のケースも(イ)同様に難しいか。(ハ)自民が200議席以上を取って比較第一党になるケースで、これだと引き続き自公連立政権が成立する。(二)民主党が210議席ぐらい取って比較第一党になる場合だが、公明はこれに加わらないだろうし、社民・共産を加えても過半数に届かない。この時造反者に声をかけると、かけられた方は総理のポストを要求するだろう。こうなると本格的な政界再編だろう。
(4) 小泉純一郎の本心は何か、盟友の山崎拓氏によると以下のようであると。政官業のトライアングル(癒着とも連携とも)を破壊することが小泉の最終的狙い。この場合の主役は「政」であり、具体的には昔の田中派であり今の橋本派だ。この「政」が変わらないなら自民党そのものを「ぶっ壊して」でもやろうという先鋭的で徹底した破壊者だという。その昔、三木武夫が目指し小沢一郎も挑戦した。小泉は彼ら以上の過激な破壊者であり、成功するなら織田信長に匹敵しようと。ここで講演者はそこまでやってしまっていいのかと一抹の不安をつぶやく。長く政治記者をやっているが小泉政権になってからぐっと疲れたと。
(5) 私は「道路公団は中途半端だったが、郵政改革は本気のようだし、自爆覚悟でやり遂げて退陣がいい」と思っていたが、その可能性が未だ残っているようだし、自公で勝ち法案を再上程し可決すれば、さすがに再度参議院が否決は出来まいし、成立直後に退陣して安倍晋三にバトンタッチがいい。小泉さんは破壊者ではあっても建設者ではなさそうだから。