改革なくして成長なし        

「経済の各種指標も好調、住金の株価も一時の40円程度から今や400円迄回復した。銀行の不良債権の強制削減・郵政民営化法案の近々の成立などの小泉竹中路線が見事に成功した結果かと思うが、公務員総人件費の削減・医療費総額急増の歯止め・年金改革などなど、今後の小さな政府に向かっての諸施策が経済諮問会議民間委員から提示され具体化される事を大いに期待しよう」と発信したところ、H氏から「住金株高の理由は、?中国の需要急増、?自動車の輸出好調、?造船の輸出急増、?日本の製品品質の高さ、?原油高による産油国生産設備投資の盛上り、?日本の鉄鋼業の過剰生産設備の縮小、?会社集約化による製品価格の交渉力向上、であって小泉竹中路線と全く関係がない、程度の低い事を言うな」とお叱りを受けたが、少々説明不足でもあったのかなと思い直し、以下に少々補足する。
(1) 住金の当期利益(億円)を1992(平成4)年から2003年の12年間につき列記すると以下の通り。 6, ▲388, ▲289, 219, 265, 40, ▲694, ▲1,451, 58, ▲1,047, 170, 307。1999年のいわゆるゴーンショック(日産自動車の鋼板調達方法見直しで住金は納入辞退)で泥沼の値下げ競争へ。同年住金の連結有利子負債は2年前から5000億円増えてしまい18,833億円に。2001年11月には株価がいよいよ額面を割った。ところが2003年から急回復し2004 年の当期利益が史上最高の1,108億円、今年は1,430億円と言われている。
(2) この間の経営判断を概括すると次の通り。バブル崩壊以降、内部留保を吐き出しつつ多角化が推進されたが、この多角化路線の容易ならざる事に気づき本業注力に軌道修正して、和歌山製鉄所の生き残りをかけて新シームレスミル工場・新製鋼工場を外部アナリストの懸念表明のある中で建設し、鹿島製鉄所についても新高炉の建設を2000年8月に決断している。更に小泉内閣発足と同じ2001年4月には「変革と再生」実行プランを策定し、社員の転籍制度導入を中心とした、かつ不要不急の資産・本業以外の子会社をとことん売却する本格的リストラを敢行したが、その時の激痛を必死に堪えつつあった時に、「神は自ら助けるものを助く」ではないが、国内外の鉄鋼需要が急増し、2002年度上期を底に流通価格が上昇に転じたのであって、再生の本質は血のにじむ自己改革であったのだ。
(3) 従来のような、そして最近の自民党総裁選に於いて反小泉で立った各氏が主張した「財政による需要創出」とか「円安誘導による輸出促進」ではなく、正に小泉竹中の「改革なくして成長なし」と軌を一にして行われたこの自己改革こそが最低36円迄下がった株価を跳ね返したのである。これは何も住金のみならずであって、一般的に、小泉政権は歴代自民党政権とは明らかに異なる改革路線を選択して、自立自存を訴え「易きにつく」を乗り越えて景気と改革を両立させたのである。小泉は何もしなかったと批判する向きも多いが、余計な事をせず民間の自力更生を待つのも立派な政策と言えなくもない。バブル崩壊以降、財政出動を声高に叫び続けた多くのアナリストは丸坊主になってその不明を国民の前で詫びなくてはいけない。そうでないなら二度とメディアに顔を出さない事である。
 長い間いわゆる守旧派に牛耳られていた自民党小泉首相の登場でその迷妄から脱しつつあり、国民の賛同を得て自己責任重視の小さな政府実現を志向しつつあるのは大変結構な事である。ドイツの無様の政治経済状況をみれば久しぶりに日本が先行したと言ってよい。