世界は今原子力発電ラッシュ               

日高義樹ワシントン・リポート「今なぜ世界は原子力発電ラッシュなのか〜ボドマン米エネルギー庁長官」が今日16時からのTVで放映される事を新聞広告で知り、日頃の不勉強を挽回すべくメモを取りながら視聴した。長官の発言要旨はほぼ以下の通り。
(1)原油の供給はこれからどうなるか
 2003年はバレル30ドル程度だったのが翌年急上昇し、現在は60ドル迄高騰している。供給が需要に追いつかないのが問題だが、サウジの新規掘削もアラムコ中心に計画されており、いずれ安定して行くだろう。しかし、中国・インドの需要が増えるし、供給は目一杯の状態が続く。精油施設が長い間増強されなかったのも問題で、各国で既設精油所の拡張が始まっている。
(2)何故原子力発電所を増やすのか
 これから10年間で電力需要は2倍になると想定されるが、環境面・価格安定面から見て供給は原子力以外にない。スリーマイル発電所事故以来30年、安全面・効率面で技術改善が非常に進み、米国105基の原子力発電所は一度も事故を起こしていない。従ってプラントの耐用年数も30年でなく50〜60年とし得ると考えられて来ている。米国の新しいエネルギー法案も原発の建設を促進させるものだ。環境保護団体の意見もCO2削減の視点から、原発に対し好意的になって来ている。中国で現在4つの原子力発電所が建設中であり、2006年には更に新たな契約が結ばれる。
(3)2053年、原子力発電所が1500になる
 世界で最初の原子力発電は1954年のようだが、2003年末において世界で稼働中の原発設備は434基(米国105、仏57、日本52、露30など)、建設中・計画中を入れると約500基だ。100年目の2053年には、現在2基のアフリカが100基になるなど、全世界では1500基になると言われている。米国では大幅な税制面での優遇措置とか、解体時の費用の政府一部負担などで建設を促進させるそうだ。仏のシノン原発は葡萄畑の直ぐそばにあるようだが、教育も徹底していて怖がる人はいない。小学校の授業から原子力発電の教育が行われている。
(4)中国の原子力発電所は危険か
 中国の原発は2002年時点で5基が稼働中で、2005年迄に5基が完成すると書かれているので既に10基が稼働中かと思われるが、米国は中国とよく話し合っているそうで、チェルノブイリ的事故の発生について米国は殆ど心配していないようだ。中国に対する信頼は高いようだ。
(5)原子力発電所の将来をどうみるか
 「太陽熱も風力も大分安くなって今後の進展を期待したいが、当分の間原子力に代わる大量発電方法はない。新しい技術によって原子力発電所は安全になり続けている。これまでの記録も安全な事を証明している。」とボドマン長官は締めくくった。
 さて、我国のみならず欧米でも原子力発電反対派の威勢がよく、困った連中だと思っていたのだが、仏も緑の党議席数を大きく減らして原発推進に進み出し、米国もここへ来て急に同様の方向にかじを切ったようだ。我国の六ヶ所村再処理工場も遅々とではあるが前進しており、今年7月にはいよいよ竣工、となっているのは喜ばしく、一日も早く世界に誇れる工場に仕上げてもらいたいものだ。先日見学の機会があった、平成14年稼動の140万Kwの石炭炊き神鋼神戸発電所だが、一日当たり3万トン弱という誠に膨大な量のCO2発生を伴うわけで、これはやはりまずいのではないかと、日高氏のワシントン・リポートを聞いて改めて考えた次第である。