高速増殖炉もんじゅの未来に栄光あれ         

 先日のTV放映「今なぜ世界は原子力発電ラッシユなのか」(日高義樹ワシントンレポート)に依れば「米国は新しいエネルギー法案によって原発の建設を促進させる。世界の原発基数は現在440だが、50年後には1500になる」そうだし、昨年末大阪国際会議場で行われたシンポジウム「地球環境時代のエネルギー選択」の報告によれば、グリーンピースの共同創始者P.ムーア氏さえ「原子力反対の同運動から離脱して原子力支持に変わった」そうで、原子力発電是非論は長い迷走を経てようやく正道に戻れたように私には思われる。そこで今着手しなくてはならないのは次の施策「高速増殖炉FBR:Fast Breeder Reacter」ではなかろうか、と以下浅学なりに取り纏める。
 我国のFBRもんじゅの歴史は、S42動力炉・核燃料開発事業団設立、S43もんじゅ予備設計開始、S52製作準備設計開始、S58もんじゅ設置許可(内閣総理大臣)、S60起工式(敦賀半島若狭湾側)、H3機器据付完了試運転、H6臨界試験終了、H7初発電、とほぼ順調に推移したのだが、真に残念な事は初発電3ヶ月後の2次系配管室でのナトリウム漏洩事故発生だった。もんじゅでは、炉心の核分裂により発生した熱は1次系のナトリウムで取り出され、その熱は中間熱交換器を通じて2次系のナトリウムに伝えられる。更にこの熱を蒸気発生器で水に伝えて最終的に高温高圧の蒸気とする。冷却材としては重水・軽水・ガス・ナトリウムなどがあるようだが、中性子の速度を減速させる割合が小さく燃料の増殖が可能という事でもんじゅではナトリウムを使っている。さてナトリウム漏洩の原因だが、温度計保護管の流体力による振動メカニズムの研究を進め、流力振動に基づく高サイクル疲労により保護管が破損した事によるものと判断された。これらの調査結果ふまえてH13には「もんじゅ原子炉設置変更許可申請」が経産大臣に提出されたのだが、住民訴訟を容れてH15初め名古屋高裁は設置許可無効の判決を出した。H16年経産大臣は設置を認可し、訴訟は最高裁に持ち込まれたが、H17年5月高裁判決を破棄、国側勝訴の判決が下った。
同年9月から改造工事が本格的に開始され、H18年度の予算原案では、ナトリウム漏洩事故から10年が経過したFBRもんじゅ(出力28万KW)の改造などへの予算約220億円が計上されたのだった。ごく最近の新聞報道によれば、軽水炉に替わる次世代の原子力システム開発を国際協力で進めようと、10ヶ国・1機関で作る「第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)」の会合が福井の国際交流会館であり、ナトリウム冷却高速炉の共同研究開発について日米仏3ヶ国(最終は6ヶ国の予定)の間で協定が締結された。GIFでは次世代炉として6つの炉型を選定し各炉毎に参加国で組織を作り、2030年頃を目途に結果を出す計画という。資源エネルギー庁の計画では、もんじゅを早期に再開して2015年迄に実用化戦略調査研究を完了、その段階でFBRサイクルの実用化像と研究開発計画を提示、2030年頃迄にもんじゅ後継機などの関連施設を設置、実証プロセス試験を完了、今の六ヶ所村の再処理工場(今年竣工)が操業終了する2045年頃に第2工場が操業開始、2050年頃から高速増殖炉FBRは商業ベースになる、となっている。 
 何はともあれ、不幸な事故で紆余曲折を経たわけだが、もんじゅの再起は大変喜ばしく、当面の目標はH20年の運転再開であろう。プルサーマルも九電玄海原発で実施されるようだが、依然として朝日新聞(2月15日社説)は反対を叫び、「唐津市の住民の不安に応えると共にプルサーマルのあり方を根本から考える。これは新しい計画を始める前提である」とわけの分からない事をいう。これらに惑わされず、軽水炉プルサーマル・FBRという流れの中で核燃料サイクルも確立されると期待している。原子力発電こそ我国が取り組むべき格好のテーマの一つである。
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