我国のあるべき対中スタンス             

大阪倶楽部での先日の講演はハドソン研究所首席研究員の日高義樹氏による「中国問題」であったが、要は「米中対決が避けられなくなっているのに能天気な日本が危うい」という事だった。講演内容のみならず昨今のメディアの関連情報を参考に、まず米国の対中国観をまとめる。
(1) 中国の現状と海外戦略; 産経新聞の伊藤正氏は「中国の特色ある社会主義と自称する社会主義体制下の資本主義化は、上部構造と下部構造の新たな矛盾を生んだ。当面最大の体制内矛盾は貧富の格差と腐敗にある。格差を生む経済成長を維持しつつ、一方で格差を縮小するのは至難。腐敗問題も官僚支配の独裁体制のままでは解決は難しく、中国の将来に確信は持てない」と書く。同じく産経の山本秀也氏は米国防次官補の証言「中国政府が公表した今年の国防費は約4兆円強で、18年連続での二ケタ増だが、他の費目に分散された予算を含む実質国防費は12兆円を超える」を伝えている。更に古森義久氏は「中国が石油や希少金属などの資源獲得の為中南米ベネズエラ・ブラジル・アルゼンチン・ペルー・チリなどに貿易・投資・経済援助という形で進出し、とくにベネズエラからの石油輸入を急増させている事、一方アフリカでもスーダンでの大規模な石油調達、アンゴラでの石油開発利権獲得、ナイジェリアでの原油獲得、ザンビアでの銅獲得、リベリアなどでの木材調達の例を挙げつつ、中国のアフリカでの接近の相手は殆どが独裁の無法国家であり、兵器供与や軍事教育などの軍事援助が顕著」などの現状を報告している。 
(2) 米国の対中国観; 深田匠著「日本人の知らない『二つのアメリカ』の世界戦略」によれば、「中国がソ連同様の共産軍事大国である以上、米ソ冷戦と同じように米中冷戦は不可避である」そうだし、米国の有力外交研究機関の上級研究員で外交問題の若手の論客として知られるM・ブート氏は「中国側の反国家分裂法、大規模な軍拡、中国軍将軍の対米核攻撃発言、ベネズエラなど反米政権との協調などの諸要因で、2001年以来米中関係は最悪になった」という論文を発表している。日高氏は「ブッシュは、30年の経済拡大にも拘わらず一党独裁の中国を信用していないし、米国が営々と築いて来た世界秩序を破壊し始めている中国との将来の対決は避けられないと考えている。中国の脅威を考え国防省のみならず国務省も動きだしたし、ハドソン研究所も主要なテーマは中東から中国へと移っている」という。更に氏は「最近ワシントンである会合があった。2008年の北京オリンピックの聖火は台湾を通るかという事だったが、中国は面子に掛けても台湾を通過させたいだろうし、台湾にその気はあるまい。米国は台湾を必ず守るだろう」という。
(3) 我国のあるべき対中政策; 米国は韓国をもはや敵とみているが、日本については価値観を共有する同盟国としているものの、中国との距離関係をどうするのか、小泉後に親中派が権力を持つのか、などに強い関心を持っていると、日高氏は言う。以上のような各識者の論説を参考にして私の対中スタンスをまとめると以下のようになる。 まず、相手が一党独裁である限り日中国家同志の真の友好と相互信頼の構築は無理であり、一日も早く自由民主義体制に変わる事を常々折りに触れ、それこそ対話と圧力で、促して行くべきであろう。その為にも日米同盟は強固でなくてはならないのは言うまでもない。もちろん隣人なのだから、日本は政経分離で中国の経済発展に寄与する事は大切であり、その際請われれば、日本は環境技術を含め更なる高度技術を提供したらいい。「歴史の終わり」を書いたF.フクシマは「日本に対する事ある毎の中国・韓国の反発について、ただ日本を弱くしておきたい為の主張だと分かったとしても、例えば安保で新たな措置をとる際には忍耐強く中韓両国へ説明を続けるべき」と言うのだが、私も好んで事を荒立てる必要はもちろん無いと思うが、あまり遠慮する事もあるまいと考える。