一木造りの名宝                      

京都願徳寺所蔵の国宝・菩薩半跏像(写真右)、滋賀向源寺所蔵の国宝・十一面観音菩薩立像(写真1)をはじめ、国宝・重文45体を一挙公開との広告を見て、10月はじめの土曜日、東京国立博物館平成館に出掛けた。「仏教を信仰した国の中で、日本ほど木で仏像を造る事に拘った国はない。特に奈良から平安時代にかけて、一本の木材から像を造り出す一木彫(イチボクチョウ)が盛んになり、江戸時代の円空・木喰(モクジキ)迄受け継がれた。木の文化を通して育まれた日本人の心や精神性にふれる」というふれ込みなので、音声ガイドを借りて一体ずつ丁寧に見学した。
 右の菩薩半跏像は8〜9世紀のもので像高88cm。肉体とそれを覆う衣、そこに出来る襞を完璧に捉えた一木彫の名作。体部を複雑に廻る天衣も矛盾なく表され、頭髪が額に垂れ、耳を覆う表現にも実在感がある。左手前腕半ばから先、左手先、両足先などを除いて本体から台座の蓮肉部迄がカヤと見られる針葉樹の一材から彫り出されている。写真2の観音菩薩立像は9世紀のもので像高177cm、日本彫刻史上の傑作として知られる。頭上面・耳飾・両手首・持物・胸飾などを除く全てが台座蓮肉に至る迄、ヒノキの一材から彫り出されている。左手は紅蓮を挿した花瓶を持っている。頭上の十一面について、前の三面は菩薩面、化仏は阿弥陀如来、向かって右三面は瞋怒面、向かって左三面は白牙上出面、後ろの一面は暴悪大笑面となっていて、十一面観音はその深い慈悲により、衆生から一切の苦しみを抜き去る功徳を施す仏であるとされる。
 円空と木喰のコーナーもあったが、円空は江戸時代前期生まれの旅の仏師、ごつごつとした野性味にあふれた、しかし不思議な微笑をたたえた12万体の仏像が残されている。木喰は江戸時代後期の仏教行者・仏像彫刻家、93歳で他界する迄、北海道から九州迄の各地に柔和で穏やかな仏を残した。以上パンフレットとインターネツト資料に基づく要約。この特別展は12月3日迄、ご鑑賞あれ。