これからの日本の政治経済          

国際エコノミスト白鴎大学教授今井澂氏の掲題の講演概要は以下のとおり。
1)今年7月のテポドン発射は小泉訪米中に起こったが、安倍官房長官の采配は水際立ったもので、国連安保理事会の制裁決議まで持って行けたのは大成功だったし、ブッシュの安倍評価は一気に上がり、福田康夫氏はここで降りたのだった。 昨年11月から今年の5月まで、経済政策論議としては谷垣・与謝野・柳沢氏ら増税派が優勢で、成長路線の安倍・中川(現幹事長)氏らは少数派だったのだが、福田の降壇と共に増税派は引っ込んだ。今でも足を引っ張る連中は多いが。
2) 増税による財政再建は100%失敗する、というのが竹中氏の信念であり、安倍政権も「歳出の10数兆円削減と成長による増収で財政再建を目指し、抜本的税制改革は2007年秋以降」としている。 支持率低下と言われるが、安倍さんは善戦健闘している、と講師は言う。私も同感だ。
3) 景気は結論的に言って来年度いっぱい大丈夫と。今次景気拡大は1965〜70年のいざなぎ景気を超えたが、「ホールインワン景気」と言われるように「パットしない」のは、輸出が中心の拡大だからだ。三つの過剰(人・設備・借金)の解消とデフレ脱却の目処も立ち、いずれ賃金上昇と消費拡大に移行すると期待。
4) 日本の輸出を支えるのは3つの柱で、(イ)BRICs産油国の近代化需要に伴う我国重工業への需要増−例えば建設機械の大型タイヤは日本のみ (ロ)世界が必要とする分野での我国の技術優位(ディジタル家電、低燃費環境対応自動車、太陽電池、航空機部品−例えば炭素繊維) (ハ)海外子会社からの配当金送金 だそうだ。
5) 米国の住宅ブームの失速とドル安、原油価格の更なる高騰などが懸念材料とよく言われるが、いずれも影響は少ないと。但し、2008.8の北京オリンピック以降は分からないと。
6) 株価の動きについては、グリーンスパンは鉄スクラップの相場を何よりも重視していたそうだ。我国では2001年のトン1万円から現在はトン3万円に上昇している。それらを勘案し、テポドン以来外国人は日本株を買わないのだが、今後株価は上がり来年5月には18,500円になろうと。
7) そんな事で当面は順調に景気拡大が見込まれるが、将来となると大変心配だと。今井氏の孫は小学生で九九をやっているが、インドでは99×99をやっている、こんなのに将来太刀打ち出来るのだろうかと、氏は心配していた。世界に冠たる重厚長大産業の現況を実感しているので、講師の足元の経済見通しについては私も同感である。
 今日は田原氏のTV番組に久しぶりに中西輝政櫻井よしこ両氏が登場して良かった。安倍内閣支持率急低下についての中西氏の解説は興味深い。一つは小泉劇場の余韻を楽しみたいと思ってまだ劇場にいる国民を、復党問題などで落胆させた事、もう一つは福田効果――福田康夫が途中で降りたため、ハト派増税派(官僚)が温存されている事、だそうだ。永年の懸案だった教育基本法防衛省への昇格を成立させ、政権としては、アジア外交と共に内政も、堅実に進めている。一気に憲法改正も、と過剰な期待をする超保守は調子に乗り過ぎだと思うが、一方少しリベラル調を出して左を取り込もうとするのは間違いだ、と氏は釘をさし、敵と味方をもう少し意識して、支持率を気にせず淡々とそして一つひとつ改革を進める事だとアドバイス。私も賛成だ。
教育基本法成立を報ずる16日(土)の朝日新聞一面に踊る見出しは「個から公 重視へ、国家色強まる恐れ」であり、社説では「教育と防衛―戦後がまた変わった」と題して「長く続いてきた戦後の体制が変わる。日本はこの先、どこへ行くのだろうか」とか、民主党も本音では十分賛成出来る内容なのに、「国民の賛否も大きく分かれていた」と書く。「我が国と郷土を愛する態度、伝統と文化の尊重、公共の精神、豊かな情操と道徳心」などが新たに盛り込まれたが、これをもって「個から公で国家色」とは到底言えまい。教職員らに法を守る事を求める規定が追加されたが、国旗国歌法や指導要領を無視した一部の過激な教師らによる違法行為が許されない事は改めて言うまでもない。