幼稚な朝日新聞(その2)

情報収集衛星の打ち上げ翌日の朝日新聞は、その成功を報じた後に、解説記事を載せたが、私に言わせれば大変腹の立つ文章だった。以下にまず全文を転記し、皆さんの注意を喚起したい。
解説――劣る性能 見えぬ意義  (改行毎の番号は私が振った)
 (1)4基目の情報収集衛星の打ち上げ成功で、政府は地球上の全地点を24時間以内に撮影できる体制を手にした。この衛星開発や地上設備の整備などにはこれまでに約5千億円がつぎ込まれた。しかし、日本が情報収集衛星による独自の監視網を持つことの意味は十分に見えてこない。
 (2)4基体制は完成したものの、03年に打ち上げられた光学、レーダー衛星には、すでに寿命が迫っている。今回、60?の識別能力がある光学衛星の実証機も同時に打ち上げられた。内閣衛星情報センターは09年度には新たな実用機を打ち上げ、4基体制を維持していく方針だ。その後も数年ごとに新しい衛星を打ち上げ続けることになる。
 (3)ただ、情報収集衛星の活動状況は公開されておらず、政府が目的の一つに掲げる災害対策でも、今までに得た画像のデータがどう生かされたのか、具体的な「成果」は示されないままだ。
 (4)さらに、地上の十数?の物を見分けるとされる米国の軍事衛星と比べ、能力の差は大きい。情報収集衛星の後継機と同程度の識別能力がある米国の民間衛星もすでに運用中。年内には約40?を見分ける高性能の商用衛星の打ち上げ予定もある。
 (5)日本は宇宙の平和利用原則に基づく政府見解により、民生分野で一般化した技術を衛星に使っており、情報収集衛星も制約を受けてきた。防衛目的の宇宙利用を認める宇宙基本法が制定されれば、衛星の大幅な能力向上も可能になる。
 (6)しかし、それは宇宙の軍事利用に大きく踏み出すことになりかねず、十分な審議が必要だ。

 以上六つの文章の言わんとするところを簡単化してみよう。
(1) 打ち上げ成功だったが、5千億円もつぎ込んだ割に、独自監視網を持つ意味が見えない。
(2) 寿命が数年なので、数年毎に継続打ち上げが必要になる(ので益々金がかかる?)
(3) この衛星の活動状況が公開されておらず、具体的成果は示されないままだ。
(4) 識別能力は米国の軍事衛星に比し劣っており、今後打ち上げ予定の米国商用衛星にも劣る。
(5) 防衛目的の宇宙利用が解禁される宇宙基本法が制定されれば、識別能力向上も可能になる。
(6) それは宇宙の軍事利用に大きく踏み出す事になりかねず、十分な審議が必要だ。

この文章を読んで、まず「結論として一体何が言いたいのか」とのフラストレーションがありませんか? 主張は「(仮に我国にとって必要だとしても)高い費用を掛けてやるよりも米国に依頼すれば事足りるのではないか。法律改正すれば自前の高性能衛星打ち上げも可能になろうが、軍事利用に大きく踏み出すことであり、そんな事はしない方がいい」という事なのだろう。そうならそうで、奥歯に物の挟まったような言い方をせず、どうしてはっきり言わないのだろうか。その辺が最近の朝日新聞の「ずるい」ところだ。何十年も前の「非武装中立」華やかなりし頃の事なら、自信を持ってそう言うのだろうが、そんな勢力は今や少数の社民党共産党のみであり、そうは言えず、かと言って「打ち上げ成功は良かった、更に能力を上げて我国の安全保障のために打ち上げを継続すべき」とも言い切れずに、うろうろしている記者の自信無さげな様子が目に浮かぶ。迷惑なのはそんな曖昧な、どっちつかずの文章に付き合わされる読者だが、朝日新聞を強制されているわけではないので、迷惑! とまず認識して、さっさと縁を切ればいいだけだ。同憂の士を糾合して国益の増進を図りたいものだ。