福寿草の藤原岳                  

 春に行きたい山の定番は「福寿草が満開の藤原岳(1171m)」と言われているそうで、以前から家内の勧誘を受けてはいたものの、標高差1000mは昨今私には容易ならざる高さでありやや逡巡していたのだが、明日は好天のようだし、今から老い込んではならじとわが身に鞭打ち参加する事とした。そこは名古屋から西へ40km、関が原から南へ20km、滋賀・三重県境に沿い南北に連なる小さな鈴鹿山脈の北端に位置する石灰岩の山だ。日曜の朝5時起床、5:30出発で名神高速道路を関が原IC迄行き、そこから国道365号を南下、7:30聖宝寺前の駐車場に到着(標高140m)、無人だが標示通り300円の料金を置き出発。山からの水で大小の鱒が育っている養鱒場を通り、裏登山道に入る。最初は300段程度の長い階段を登って聖宝寺に着くが、ここを抜けて行くと本来の登山道となる。杉や檜の植林の中の暗い道がしばらく続くが、5合目を過ぎると植林地を抜け自然林となって辺りは明るくなり、6合目からは尾根筋となる。8合目近く迄登ると下山路に使う大貝戸道(オオガイト―これが表登山道)が左から合流し、そこはちょっとした広場になっていて、少々貧弱だが福寿草も顔を見せているのでここで小休止とする(標高840m)。ここ迄は一度も下りのない直登ばかりだったが、ここからはさすがにジグザグ道、残雪もありその為道も少々ぬかるむ。ペースもだいぶ落ちて喘ぎあえぎ登ると9合目、更に雪道を行ってやっとの事で無人の藤原山荘に到着した。大勢が休憩しているが、左が20分で展望丘(1140m)へ、右が30分で天狗岩(1171m)との標示があり、天狗岩を往復する事とする。これが正解だったのだが、その途中で福寿草の群落に出会い、撮ったのが下の写真である。白っぽい岩は石灰岩と思われるが、陽射しがあって花はしっかりと開いて直径4cm程度だ。天狗岩到着が丁度12:00だった、まずまず。
 帰りは膝を庇って慎重に下りなければならず、早々に下山開始。8合目迄来て気がついたのだが、南東方向の隣の尾根筋を見ると同じぐらいの高さ迄車の通れそうな林道がある。あそこまで車が行けるのなら楽なのにな、と不思議に思ったのだが、後で調べてみるとそこは藤原鉱山の林道らしい。セメント原料の石灰の採掘を1975年迄続けていたようで、今では誰も近づかないが坑道も事務所も廃墟となってまだ残っているという。ついでに言えば、登山口の近くまで四日市市から三岐(三重・岐阜)鉄道が走っているが、これも石灰を運び出す為に1931年国策的に作られた路線だそうだ。最近は中部国際空港向けの埋め立て土砂の輸送も行ったと。分岐点から比較的楽な表登山道を下りたが、それでも途中から膝が痛み始めた。何人にも追い越されて格好が悪かったが、ゆっくりと庇いながら下山を完了した。案内書にあった自然科学館に立ち寄ると閉館直前だったが、「5分だけ」と言って見学させてもらう。33年前の開館で、藤原岳の動植物を紹介しているが、小さな町なのに立派なものだ。それにしても長年の懸案藤原岳を解決した一日だった。