竹中平蔵氏の講演         

12月13日「関西経済人・エコノミスト会議」総会がリーガロイヤルホテルで開催されたが、竹中さんの一時間弱の講演を聴講した。発言をそのまま要約すると下記のとおりだが、意気軒昂で明快だった。小泉・竹中チームが更に5年続いてもらいたかった。
(1) 外国ではよく回顧録が出るがFactが公開されるのはいい事であり、それにならって「構造改革の真実」という本を出した。もちろん事前に小泉総理に目を通してもらったが、例によってワンフレーズで「うん、いい本だ」と言ってくれた。(私の注、丁度一年前に日経から出版された344頁の本で各章は、改革の日々が始まった、小泉内閣という奇跡、金融改革の真実――不良債券という重荷、郵政民営化の真実――改革本丸の攻防、経済諮問会議の真実――政策プロセスはどう変わったか、日本経済二つの道、となっていて、主役が語る躍動感に富む政治分析である)
(2) 先11月に4回海外(主としてアジア)に行ったが世界は目まぐるしく変わっている。高層ビルは日本に200(最高250m)あるそうだが、上海には1700(最高500m)ある。日本のGDPは米国の40%というが、日本の一人あたりGDPは今や世界の中位で、来年は20位になってしまうかも。海外ファンドは「日本への投資は来年ゼロにする」と言っている。名目成長率を2.1%にすると政府は公約したが、デフレ脱却が出来ていない。OECD30ヶ国の20006年のGDP成長率平均値は5.2%であるのに対して、日本は1.2%であった。成長は必要だが、もういいのでは、という人も多いがとんでもない。今こそ成長率アップが必要。
(3) 福田政権は政策の手順を間違えている。財政再建の成否はまず歳出削減が出来るかどうかだ。独立行政法人の民営化に大臣が反対しているようでは話にならないし、経済諮問会議民間委員は全然駄目。まず(a)成長率アップをコンセンサスにする、(b)日本政府の資産は米国の5倍ある、政府自ら身を削るという手順を正しく、(c)約束した事は必ず守る。
(4) 地方の疲弊と言われるが、これはグローバリゼーションによるもので構造改革の結果ではなく、むしろ構造改革が不十分だからだ。道州制にして政府はそこへ権限を委譲する。関西で言えば(a)広域行政を急ぐ、銀行・メディア・新聞・大学などいつまでも県単位ではあるまい。(b)関西空港のオープンスカイ化、今東京・北京の日帰り出張が出来ないが、関西でまずこれを可能にする。(c)世界遺産を生かした観光政策。(d)中国研究の強化。米国は精華大学内に研究所を作っている。日本には中国研究者が極めて少ない。関西は中国研究の拠点になれ。
(5) 依然として何でも国にしてもらおう、という人が多い。福沢諭吉は「国を支えて、国を頼らず」と言ったではないか。「この人民ありてこの政府あり」との辛辣な警句も言った。自分の努力不足を棚に上げ、政府に対する不満ばかり口にしているようではこの危機から抜け出せない。