石炭ガス化複合発電(IGCC)実証機  

 電力9社70%・政府30%の分担で1999年から進められて来た「空気吹き噴流床石炭ガス化発電プラント」実証機プロジェクトは2009年が最終年となるのだが、常磐共同火力(株)・勿来発電所構内で2007年後半から行われている25万KWの実証試験を昨年末に見学する機会があった。プラントは三菱重工の設計製作であり、現場所長さんに案内して頂きながら説明を伺ったが、海外顧客の視察も多く2〜3年後の契約成立を期待しているとの事だった。複合発電(ガスタービン・蒸気タービンのコンバインドサイクル―C/C)プラントは新潟で、同じく三菱重工によって初めて1984年に、建設されたのは知っていたが、これに空気吹きガス化炉を付加したIGCC(Integrated Coal Gasification Combined Cycle)の商用運転が近々始まるというわけだ。三菱ガス化炉のもう一つの特徴は二段噴流床で、灰の良好な溶融排出性を確保していると言う。
 エネルギーセキュリティー確保の為に、世界に於いて埋蔵量が豊富で価格が安定した石炭を利用した火力発電の導入は、我国として避けられない事であるが、微粉炭火力に比し、(1)約2割の送電端効率向上、(2)CO2排出原単位は石油火力並みが可能、更に(3)利用可能な炭種が拡大されると言うIGCCの開発は、世界的に見ても焦眉の急と言って過言でない。 欧米では既に数機のIGCC(送電端効率40%未満)が運転中であるが、我国のこの実証機はガス化炉を空気吹き(空気分離機不要)としている為送電端効率は42%(1200℃級)と高く、更に商用機では48〜50%(1500℃級)が見込まれており、酸素吹きガス化炉の海外プラントと比較して発電コストで優位だと所長さんは胸を張る。
 写真は見学した実証機で、右手奥がガス化炉、その手前がガス精製設備、写真左手が複合発電設備である。下図の実証機構成を説明する。左から石炭が来てガス化炉に入り、生成ガスは熱交換器を経てガス精製設備で浄化された後ガスタービンに入る。 排ガスは排熱回収ボイラーを経て煙突へ。 排熱回収ボイラーとガス化炉熱交換器で製造された蒸気が蒸気タービンに供給される。 ガスタービンと蒸気タービンは連結されていて発電機を回すわけだ。
 実はこの実証(1700t/日)プロジェクトの前に、石炭ガス化基礎実験(2t/日)、パイロットプラント試験(200t/日)があり、それを入れると20数年の長期プロジェクトなのだが、あと2年でめでたくゴールにたどり着くようだ。H2ロケット・C/Cに続く三菱重工のヒット商品になる事を期待している。