世界の原子力発電ラッシュ・その2

 「世界は今原子力発電ラッシュ」と題する短文を丁度2年前に書いたが、今年1月20日日経新聞朝刊に「原発ラッシュ、新興国熱く」との見出しで、世界各国の原発開発計画が報じられていた。それによれば世界の既存原発は439基、建設中・計画/構想中は36ヶ国349基となっている。併せて約800基であり、これが何年先の数値なのか定かではないが、2年前に言われていた「2053年(最初の原発稼動から100年)には1500基になろう」に向かって順調に推進されているように思われる。別紙に各国の基数を示す。トルコは100億ドルをかけ2013年までに出力合計500万kWの原発を民活方式で建設するようだが、エジプト・アルジェリアチュニジア・ヨルダン・イエメンなど中東各国も一斉に原発建設に走り出したし、原発ゼロ地域の東南アジア各国(タイ・ベトナムインドネシア・マレーシア)も新設に乗り出したそうだ。新設数で突出するのが中国で地方政府の構想も含めると百基を優に超え、ロシアと米国はそれぞれ三十基以上、これにインド・南アが続いている。
 今後25年で30兆円という巨額な需要になるそうだが、このような原発建設ビジネスに主導権を握るのは、東芝ーWH(ウェスチングハウス)、三菱重工、GE(ジェネラルエレクトリック)ー日立、仏アレバの四陣営に集約されていて、日本勢は新設需要の殆どに関与する事になるようだ。真に元気の出る話だ。問題は新興国を巻き込んだ原発ブームが核拡散に直結しかねない事だが、これに関しては、再処理を手掛ける国とその他の国とに分けて核燃料を管理するという「国際原子力パートナーシップ構想」がブッシュ政権によって提唱され、日本勢はこれについても中心的役割を果たすという。米国次期政権の意向いかんという面もあるようだが、カギを握るのは高速増殖炉であり、この面でも我国は着実に研究開発を推進している。(ナトリウム漏洩対策等改造工事をH.16.3から始め、本体工事、工事確認試験を経て現在プラント確認試験中であり、真に頼もしい限りである。)
 ところで昨今大きな話題になっている二酸化炭素による温暖化問題だが、世界の発電電力量と電源構成を東京電力のホームページで調べてみると添付のような図が見つかった。これは国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook 2006」の最新報告のようだが、2004年に対比して2030年の見通しを行っている。2030年については「基準」と「省エネ進展」の2ケースを示していて、全発電電力量(兆kWh)は2004の17.41に対し、2030の「基準」で33.75(年率2.6%増)となっていて、増分は16.34、この増分の内訳を見ると、石炭で7.79、原子力で僅かに0.56である。「省エネ進展」では29.84(年率2.1%増)となっているのだが、同じく内訳は石炭4.00に対し原子力1.37であり、将来ともに石炭依存の構図である。真に由々しき事態と考えるが、石炭ガス化複合発電(IGCC)についても我国は先頭を行っているようであり、原子力・石炭ガス化発電いずれの面でも更に技術を磨いて、現下の最大のテーマに貢献してもらいたいものである。