オバマ外交で沈没する日本                   

NHK記者、現ハドソン研究所首席研究員・日高義樹氏の掲題の近著を要約する。氏は昨年、金融破綻以前ではあったが、オバマは落選すると言っていたわけで、見込み違いだったのだが、ワシントンで米国エリートとの交流が多く、その経験からの日本への警鐘はユニークである。
1) 北朝鮮問題
 ブッシュ/ライスから「北朝鮮との二国間協議など個別交渉はしない」と命じられていたが、これでは話が進まず、外交官としての自分の責任が追及されるのを恐れ、とにかく六ヶ国会議を続ける為に、ヒル北朝鮮との個別会談にのめり込んだ。以降「北朝鮮政策は国務省リベラルに乗っ取られた」わけだが、オバマヒルを支持しており、いずれ北朝鮮を国家として承認するかも。いずれにしても、日本にとっては一大事だが、米国にとっては北朝鮮問題などは小さな問題。
2) 日本の防衛問題
 中国のミサイル攻撃能力が飛躍的に向上しており、三沢・横田・嘉手納各基地が狙われる懸念が大きい。在日米軍の防衛力を強化するのは、日本国内の(民主党小沢の様な)反対勢力もあって容易でないので、在日米軍基地を遠くへ移動させ、上記三基地を前線基地・補給基地と看做す。米空軍はハワイを中心とし、グアム・アラスカを加えた三拠点体制を取りつつある。オバマの考えは「日本防衛や在日米軍基地は二の次」であり、日本からの米軍撤退の方向である。
3) 対中国政策
 中国は現在2兆ドルの米国債を持っており、米国としては今後も買い続けてもらわねばならないので、オバマクリントンも人権批判は控えざるを得ない。中国が現在の調子で軍事力を強化して行き、米国の機動艦隊と空軍を押えこめると判断したら、台湾併合に乗り出す危険は十分にある。オバマを支持する米国人はどちらかと言えば「台湾問題は米国と無関係」と考えているので、オバマは中国に対しては弱腰の姿勢を取る事になる。
4) 日本はどうする?―日高氏の見解は次のようである。<1> 独の対米姿勢も一つの参考になる。オバマの弱気な外交政策に独は反発し懸念し、本来敵である露との関係を強化する方向だ。天然ガスの露からの入手などメルケルの米との駆け引きは厳しい。米のイラク過剰介入を嫌ったが、独は米の強い外交(軍事)を求めている。<2> 米の権威の失墜(リーダーの座を降りる)と中国の台頭で、これからは地政学的国家間競争の時代だ。今迄我国の平和と経済繁栄は、「在日米軍による抑止力で成り立っている」のは世界の常識だが、前述のように内向きなオバマなので、「米軍に守ってもらう」わけには行かなくなる。逆に言えば、今こそ「自らの力で国を守る」というチャンスの到来だ。 <3> まず外交の基本であり、強力な切り札となる有効な抑止力を我国は持たなくてはならない。核爆弾だけが抑止力でなく、ミサイルシステムの通信体制を破壊するサイバー攻撃も有効で、日本が持つに相応しい抑止力だ。<4>今大事なのは指導者。平和をタダで手に入れる時代が終わろうとしている今、米国が国際問題に強い関心を持てなくなった今、問題は我国の指導者だ。国民を説得し、国外の反対を弾き飛ばし、憲法日米安保条約を改定して、国と国民を守る、という意思と実行力を持った指導者が見当たらない、これでは日本沈没だ。
5) 私も同感で、大事な総選挙を前に、無償化・無料化を大の政党が競い合っている政治の劣化に目を覆う。米・中・露はじめ海外諸国は日本の堕落と混乱にほくそ笑んでいるに違いない。