化けの皮がはげたオバマ大統領

産経新聞ワシントン駐在編集特別委員の古森義久氏の、恒例となった大阪倶楽部の講演会があり、演題は「新しい年の世界と日本」だが、内容は掲題のような話だった。 下記はその要旨だが、1月22日の同氏のブログに同様の記事があるので、合体して記載する。
(1) 支持率の急落 丁度一年前に大統領に就任したオバマ氏は、白馬に颯爽と跨る無敵の王子のようだった。ところが今や、内政でも外交でも明確な実績は殆どなく、支持率も75%から一気に45%となって、この下落率は過去最低の大統領の一人と言われている。
(2) その原因 オバマ大統領に対する、米国民一般の不安・反発は以下の通り。 
① どんな人間なのかの疑念―外交や軍務の体験がゼロなのに、外交官や軍人に訓示を与える。ビジネス界で経験が無くても大企業の幹部に経営を教示する。この種の懐疑は今や民主党系の識者からも指摘され「氏は、過去の実績で敬愛される大統領ではないのが弱点で、自分がどんな人間か分かっているか否かも疑問だ」といった辛辣な評さえある。
② 過大な政府に対する反発―個人の資質が不明でも、その政策が示すイデオロギーの特徴は明確だと指摘されている。それは医療保険・教育・エネルギー政策で示した姿勢であり、「ソ連スタイルとも言える巨大な政府による管理で、社会民主主義志向」だと。「歴史的に個人主義が強い米国への挑戦であり、これでは当然ながら、米国民の多数派からは拒否される」と識者が評している。医療保険改革案も後退に次ぐ後退を余儀なくされている。オバマ氏への反発が民主党リベラル派への反発となり、リベラル派の牙城マサチューセッツ州での上院補選で無名に近い保守派候補が圧勝すると言う結果まで生んだ。
③ その他―核兵器廃絶を宣言してノーベルをもらったものの、受賞演説では「武力行使は不可欠なだけでなく、道徳上も正当化される事もある」と言わざるを得なくなって米国内では失笑を買い、一方アフガンの状況は深刻さを増し、対テロ戦争を甘く見てテロ未遂事件を誘発したと批判されている。米国のUnityを叫んだのに、視聴率を伸ばす保守派のFOXテレビの批判的論調に反発して、合同取材から排除しようとしたりしている。
(3) 日米同盟の迷走 昨年8月27日NYtimesに載った鳩山論文は、日本の離米宣言と受け取られ民主・共和両党共にびっくりしてしまい、それは今でも続いている。腹が立っても、内政外交に諸問題を抱えているオバマ政権としては、自制せざるを得ないし、日米関係は悪くないと言わざるを得ない。戦略面での共通認識・価値観の共有と言う面で大丈夫なのか、日米同盟の終わりの始まりではないのか、と懸念する人は多い。もし本当に日本政府が、中国の軍拡や北朝鮮の核に対し問題を感じず、米軍に居て欲しくないなら、それをはっきりと国民に言いそれを踏まえて米国に言ってくれ、と言う思いが米国にはあると古森氏は言う。
(4) 感想 長期間にわたる大統領選挙を通じて、品定めをし納得づくで選んだ筈なのに、たった一年でこんなに変わるのかと、いささか腑に落ちないが、「不幸を選択したアメリカ」と題する著書で日高義樹氏も「オバマ大統領を選んだ事は、不幸なアメリカと世界を作り出す不幸な選択だったのではないかと私は恐れている」と書いていたのを思い起こし、改めて確認し、民主主義とは一体何なんだと思った。しかし同時に、チャーチルが「民主主義は最悪の政治だが、今まで存在したいかなる政治制度よりマシである」と言ったのも思い起こした。米国はいずれ共和党に代わるのだろう。そして我が日本はいつまで漂流するのだろうか。