2010年の内外情勢

同志社大学法学部教授・村田晃嗣(46歳)の、大阪倶楽部での、掲題の講演があり、現下の課題に対する、中々歯切れのいい見方が率直に表明されており、興味深いものだった。以下その要旨。
1. 昨年の政権交代: 自民党の政権が長く続いた要因は①冷戦(自民以外に選択肢は当時無かった)、②経済成長と分配(成長の成果が大きかったから、分配は可能でそれは単純な事だった)、③中選挙区(派閥の競争で活性化が図れ、疑似的政権交代が行われた)。この三つが無くなり、過去20年間で全てが悪化したが、中でも自民党世襲化が顕著になったのが大きな問題。民主党の前原などは松下政経塾を出て京都府議会議員となり、その後自民党からの国政出馬でもおかしくない人材だが、現職優先の自民党からの出馬は不可能だった。20年前、鳩山も小沢も岡田も北沢も全て自民党竹下派に居た。民主党政権が出来たのでなく、自民党竹下派の復活みたいなもの。民主党が勝ったのでなく、自民党が敗れたのだ。
2. 参院選の結果予想: 次の四つのケースがある。①民主の単独過半数(この可能性も残っている)、②単独過半数未達(今の連立の継続)、③連立でも過半数未達(公明党の連立参加、公明党は個別政策に執念なく政権内にいる事が最大の関心事)、④自民党が第一党(これは極めて少ない可能性)。
3. 大事な事は三つ: ①野党としての自民党の再建が成るか、②民主党衆院議員308の内147人が新人だが、次期選挙でこの小沢私兵の公認をどうするか。常に新しい人材を登用出来るか。その意味でも今後小沢が癌になる。小沢の排除が必要。③衆参のねじれの可能性は常にある。憲法改正参院に対する衆院優位を明確にする必要がある。
4. 普天間問題の帰趨: 日米政府・名護市長・沖縄県知事の四人のプレーヤーの奇跡の一致で2006年辺野古に落ち着いたのに、このガラス細工を鳩山が軽率にも破壊した。5月末までに移設先を結着させるという意味は、①予算と予算関連法案が通過済なので、社民などを切れる。②6/21, 22のトロントでの会合で鳩山・オバマ会談が可能。③結着案はいずれにしてもおよそ沖縄県民を納得させるものでないだろう。④従って鳩山は辞任せざるを得ず、内閣改造菅内閣となり、参院選を迎える。ここで鳩山に責任感と行動の勇気がありや???だと村田氏は言う。ここで余談だがと、村田氏は「国民新党の下地議員は、自分も県民の期待に応えられなかったとして辞任する。そして次期知事選挙に出馬する」と言う。
5. 本当の課題は何か: 1968年日本は世界第二のGDP大国になり、爾来42年が経った。今年中国が日本を抜く。2015年には中国のGDPは日本の二倍になる。2050年には日本のGDPは今の半分になると言われている。このようなダウンサイジング化にどう対応するかが大きな問題なのだが、その策は?? と村田氏は自問し、「要は人材だ。明治維新の時も、先の大戦の後も、人材力で乗り切ったと言える。今回も人材育成に成功すれば立ち直れる」と締めくくった。
6. 私の持論: 自民党経世会(竹下・金丸→金丸・小沢→橋本・小渕)を小泉氏が打倒し、既得権益の破壊による改革を目指したが、小泉退陣と共に元に戻ってしまって自民党は選挙民から見放された。自民党の議員で20歳代は小泉進次郎ただ一人、30歳代は僅かに6人だ。民主党も鳩山・小沢・菅まで引退し、よく勉強して来た若手からリーダーを出し、必要なら政界再編を行って、日本の政治体制を確固たるものにしたいものである。