「日本よい国」構想 

参院選を前に新党の旗揚げが続いているが、国民受けするマニフェストの競争の観があり、下手をすればバラマキ競争になりかねない。今日明日の生活でなく、日本をどのような国にするのか、を明示する「新党の理念」こそ心ある有権者が待ち望んでいるのだ。その意味で、日本創新党々首・山田宏氏の、掲題の新著は注目に値すると、私は考え、以下に要旨を記す。因みに氏は、京大法卒・松下政経塾卒・東京都議会議員衆議院議員を経て現在迄9年間杉並区長であり、杉並改革(予算一律15%削減・学校給食民間委託・学校選択制導入などなど)に実績を挙げている。
1. 誇るべき日本: (1)一国一文明は世界で日本のみだが、それは、国家の平和と国民の幸福を祈る祭祀王・「天皇」を、日本人が一貫して大切にして来た事による。(2)外国文化を吸収しつつも不変の核があった。それは「家を大切にし先祖を敬う心」「自然を畏敬し農を大切にする心」「清き、明き、正しき、直き心」などだ。(3)幕末以降、日本を訪れた外国人の多くが、日本を高く評価しているが、我が先人の見事な生き様に誇りを持とう。(4)今世界は危機にあるが、長い歴史を経て来た日本の、生命観・自然観・倫理観への誇りを胸に世界に貢献しよう。
2. 歴史とのつながりの回復: (1)戦後解体された「家」制度、個人重視の視点を見直し、個人と家のバランスをとる。(2)「日本は悪い国だった」という間違った歴史観東京裁判GHQ占領政策によって形成された。日本の近現代史を客観的視点で再検証すべき。(3)古来からの日本文化伝統・哲学美学文学・貴重な精神的財産を海外へ発信する。(4)「国家あっての国民、国民あっての国家」を強く認識し、国に対する貢献を国民一人一人が「自助精神」で考える。
3. 自由・責任・相互尊重: (1)「役所が国民の富を集めて、正しく配分する」というのは、もはや幻想、到底無理。(2)現下の豊かな時代では、中央集権は不効率・不公正 (3)「先生は友達・先生は労働者」が「真の教育とは、師からの慈愛と弟子からの尊敬との関係から生まれる」という教育の原点を崩壊させ、教育を荒廃させた。(4)小選挙区導入後十年、政党間の国民不在の権力闘争・党非公認を恐れる議員のサラリーマン化による政治の劣化。その結果永田町の官僚支配が更に強まり、なすべき諸改革は後回しで日本の地盤沈下を招いている。
4. 新しい国のかたち: (1)首相公選制の導入を新憲法の制定作業の中で検討する。(2)中央政府には、外交・防衛・国家としての教育政策・通貨政策などを残し、その他省庁の仕事は全て地方の仕事とする。受け皿となる地方の単位は道州制だ。(3)複雑怪奇な現在の税制度を、国税所得税法人税・消費税のみで、一律10%に固定。(4)介護の社会化・子育ての社会化という考え方だけではいずれ行き詰る。「家族の絆」を支援する政策を打ち立てるべき。(5)自由貿易・自由な市場経済を守る為にシーレーンの防衛を含め、日本は死力を尽くすべき。(6)一国平和主義の甘えから訣別し、自衛隊の海外派遣も日本国民の責任で行う。(7)効率的火力発電所原子力発電所太陽光発電など、「安全・安心・安泰」の輸出国になる。(8)北方領土竹島尖閣列島の問題、領海侵犯・拉致の問題、などに対して断固たる決意と行動を示す。
5. 筆者の感想:  「美しい日本」を掲げ「戦後レジームからの脱却」を目指した安倍晋三元首相が、残念ながら志半ばで挫折したが、この山田氏の「日本よい国」の目指すベクトルの方向は殆ど同じだ。共産党議員の執拗な質問を区長自ら論破して、杉並区立中学校では扶桑社の歴史教科書が採択されたようだが、それもさる事ながら、国のあるべき姿を提示するその姿勢こそ、有権者が今各党に期待しているものだ。事業仕分けや子育て手当などではない。