日本は中国の属国になる

掲題は、長らく防衛庁防衛研究所におられ、中国軍事力研究の第一人者・平松茂雄氏の新著(海竜社2009年12月)の書名で、第一章「日本の海を呑み込まれても中国に無策な日本」、第二章「核ミサイル・宇宙開発で世界の大国に成長した中国」、第三章「融通無碍な中国の対外戦略に振り回される日本」、第四章「新たな国家意識がなければ日本は中国の属国となり下がる」、となっている。まえがきにて著者が「中国が東シナ海に進出する事、いずれ軍艦が出る事など、海洋と宇宙に拡大する中国の軍事力、対日工作の実態などを、あらゆる機会を通して何十年にわたって、警鐘を鳴らして来た。警鐘・予告の多くが、あるものは顕在化し、あるものは潜在化したままに行きつくところまで行き着いてしまった。日本は、戦わずして中国に敗れ去ったのである」と述べたように、悲痛な叫びを吐露した書だが、ここでは最終節を中心に結論的記述をまとめておく。
 著者は、日本が中国の属国とならない為には、日本の国家戦略を打ち立てた上で、米国との同盟関係を強化しなければならないが、そうかと言って現在のような(米国)依存体質を引きずったままではダメだという事で、国民の意識改革を促している。
1. 今、日本には自立のチャンスがあると認識し立つ事だ (立ちあがれ日本、という事か)
(1) 日米同盟が揺れているが、日米同盟強化のチャンスでもある。核大国中国の出現に直面して、前進基地日本はそれだけの責任を担ってくれと米国は望んでいる。日本は国論を統一して、片務的な日米安保体制を改定すると共に、集団的自衛権の行使を認め米国と共に戦う態勢にする事だ。
(2) 日本は今や核保有国に包囲されている。核抑止力の再構築を図るチャンスである。米ソ冷戦時代に西欧諸国は中距離ミサイルを配備してソ連の核威嚇に対抗したが、その先例は今の中国・北朝鮮の核威嚇に対抗する上で有効だ。
(3) 日本自身が核武装に踏み切るチャンスが来ている。そう遠くない将来起こるかも知れない台湾の軍事統一の際、中国は米国に核ミサイルをぶち込むと威嚇するだろう。横須賀から米海軍の空母機動部隊が出動する場合、中国は間違いなく東京を核攻撃すると脅してくる。その時米国の核の傘が有効に機能するかどうか、米国国民次第であり確約などしてもらえない。とすれば、日本は核ミサイルで武装する必要がある。
 日本に於いて、技術・法律・世論というクリアしなければならないものは沢山あるが、一番ハードルが高いのは国内世論だ。中国は少なくとも数十発の核ミサイルを我国に向けている。覚醒された国民の出現を期待する所以である。
2. チベットにならないよう、国の為に尽くせ
チベットは20世紀の初頭、英・露・清と結んだ条約によって主権を奪われ、独立国の状態を失ってしまった。その原因として、独立国であるという意識の希薄、独立を維持する軍事力の劣化、独立国として世界に向けて発信する事を怠った事が挙げられる。今日のチベットは、明日の台湾、明後日の日本を映す鏡である事を銘記したい。それを考えると、今の日本に決定的に欠落しているものは国家意識である。米国による占領政策とは日本弱体化政策だった。未だに日本はその線上にあり、自立した自国防衛システムを構築しようともしない。昭和27年の独立後の日本人には「自主防衛」「自主憲法制定」が当たり前で、失地回復の志が共有されていた。それが失われて今日の日本になってしまっている。それを取り返すのが最大の課題だ。(筆者の怒り: 事業仕分けなど瑣末な事に、うつつ抜かす暇はないのだ。)