読書感想

ソ連の崩壊と日米同盟の勝利(古森2) 

古森義久の著書「アメリカはなぜ日本を助けるのか」の第9章の要旨で(古森1)に続いています。 1) ソ連の核ミサイルSS20 1980年代前半の核問題というのは、ソ連が1977年から西欧各国や日本を射程に収めて配備を始めた、凄い威力の戦域核ミサイルSS20の事であり、5年後…

米国は「日本の核武装」に異論なし 

掲題は月刊誌Voice 3月号掲載の、日高義樹論文の題目であり、以下はその要約である。 キッシンジャーは言う、「日本のような大国がなぜ核兵器を持たないのか。もっとも日本が核を持とうとすれば、世界中と難しい政治的やりとりが必要にはなろうが」。フェイ…

日本に必要な核抑止力

小学館101新書「中国の核戦力に日本は屈服する」(伊藤貫著、2011) を読み終え、現代史復習の最終コーナーのテーマと思い、以下に要旨を記し、諸兄の関心を高めたい。著者は25年間ワシントン在住の国際政治・経済アナリストで、国際政治学で言うリアリスト派 …

アメリカはもう頼れない

掲題はハドソン研究所首席研究員・日高義樹氏の最新刊の書名(徳間書房)である。幅広い人脈から得られる情報に基づく日本へ警鐘には、いつも感銘を受ける。本書の要旨は以下の通りだ。 1) 米国の戦略の変遷 : 昔は敵はソ連であり、基地はドイツを中心とする欧…

国家観無き安全保障の脆さ            

學士會会報 No.883 (2010.7)に九州大学教授・石田正治氏の「日米安保体制再考」が掲載されている。その結論は「統治体制に対する国民の信頼が無い現在、我国の安全保障は、張り子細工のように脆い」と言う事なのだが、その論旨を以下に要約し、しからば対策…

普天間基地移設問題混迷の原因                

沖縄の米軍基地縮小を目指す普天間問題に関して、二冊の新刊書が七月に刊行された。森本敏著「普天間の謎」(海竜社)と守屋武昌著「普天間交渉秘録」(新潮社)である。この二冊から私はまず「普天間基地問題の経緯」と題する年表を作成し、何故にこの問題が長…

「日中対決」がなぜ必要か                  

表題は、2009.10 PHPから発行された単行本の書名であり、副題は「中国・建国以来の真実と影」となっている。著者は、東京外大中国語科卒・東大大学院卒・現在国際教養大学理事長/学長の中嶋嶺雄氏であるが、中国人で神戸大卒・現在民間研究機関勤務の石平(セ…

中国の脅威

掲題は昨年末ワック(株)から刊行された古森義久著の書名だが、これはアメリカ議会の超党派の常設政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が、長い時間と膨大なエネルギーを投入して続けて来た中国についての調査の、2008年度報告(2008.11公表)の要旨である。…

日本は中国の属国になる

掲題は、長らく防衛庁防衛研究所におられ、中国軍事力研究の第一人者・平松茂雄氏の新著(海竜社2009年12月)の書名で、第一章「日本の海を呑み込まれても中国に無策な日本」、第二章「核ミサイル・宇宙開発で世界の大国に成長した中国」、第三章「融通無碍な…

日本人よ、矜持を持て――その2

元外務次官・村田良平氏回想録の最終章第3節以降第9節迄の主要な部分を私なりに要約しておく。 1. 過去の日本の戦争についての評価 当時の全世界的雰囲気として、(1)欧米人は全面的に人種主義者であり、有色人種というだけで日本人は差別された。(2)明治維新…

日本人よ、矜持を持て――その1

昨年9月発刊の、元外務次官・村田良平氏回想録の最終第14章は「日本人よ、恥を知り、矜持をもて」なのだが、「かつては自尊心高き民族だった日本人が、何故かくも矜持を失ったかの根源は、60年以上前の米国の日本占領にある」という日頃からの私の思いと同じ…

明治人柴五郎の生涯

掲題は村上兵衛著「守城の人」(光文社1992、文庫本2002)の副題、文庫本では774頁にもなる大著だが、現代史の復習には恰好の名著であり読書の秋に相応しく一気に読了した。筋書きがほぼ推測出来るので、目次を適宜選んで記すと、会津武士の子・鳥羽伏見の戦い…

渡辺利夫氏の「新脱亜論」                     

掲題は文春新書の新刊であるが、拓殖大学学長渡辺氏は1939年生まれ、筑波大学教授・東京工業大学教授を経ての現職、主な著書に「成長のアジア 停滞のアジア」(吉野作造賞)・「西太平洋の時代」(アジア・太平洋賞大賞)・「開発経済学の時代」(大平正芳記念賞)があり…

限られた日本の「裁量の余地」−その2       

新刊「暗流」の最終第7章は「中国の台頭、日本に残されたシナリオ」である。以下著書からの抜書きである。前章迄の考察で、米中関係の行方が日本の進路に大きな影響をもたらす現実が浮かび上がって来た。視点を21世紀半ばに迄伸ばし、超長期で米中日関係を占…

限られた日本の「裁量の余地」−その1           

今年1月に日経新聞から出版された、秋田浩之著「暗流」は、アジア太平洋の国際関係に関心を持つ者にとって格好の教科書である、と書評にあったからではないが、「米中日外交三国志」という副題に釣られて通読した。「中国の大国化に伴い深く静かに変化する米…

強制された死か、個人の尊厳か             

今日(2007.12.22)の朝刊によると、「沖縄ノート」訴訟結審と題し、先の大戦末期の沖縄戦で住民に集団自決を命じたとする、誤った本の記述で名誉を傷つけられたとして、当時の守備隊長らが大江健三郎氏と岩波書店に出版差し止めを求めた訴訟(2005.8.5提訴)は21日…

カラマーゾフの兄弟                  

新訳「カラマーゾフの兄弟」(訳者は東京外国語大学教授・亀山郁夫氏、光文社古典新訳文庫から昨年9月第1巻が出版され、今年7月全5巻が完結) が、ある日の新聞広告で大々的に宣伝されているのに気づき、その昔、読み出したが直ぐ放り出した記憶もあって大変興…

近衛文麿、黙して死す  [木戸幸一その4]    

工藤美代子氏の著書「われ巣鴨に出頭せず」では、木戸幸一についての疑念がかなり表現されていたのだが、これを徹底して糾弾したのが本年3月草思社から刊行された掲題の鳥居民氏の著書である。『誰が近衛を殺したのか、木戸・ノーマン・都留は何を隠蔽したの…

われ巣鴨に出頭せず(2) [木戸幸一その3]

1941年9月6日の運命の御前会議の後、近衛首相は退陣し、木戸の上奏により10月18日東條内閣が発足した。天皇の意を汲み東條は対米交渉にそれなりに努力はしたが、所詮は時間切れであり、12月6日の真珠湾攻撃となって行った。緒戦の勝利が長続きする筈はなく、…

われ巣鴨に出頭せず(1)  [木戸幸一 その2]      

平成18年7月18日の日経新聞夕刊に大変興味深い記事があったのだが、戦争責任を考える上で重要な情報なのでここに紹介する。「H.ノーマン」に続く「その2」である。「近衛文麿の尋問記録、英国で発見」「敗戦は必至、軍の暴走に苦悩」などの見出しの後、以下…

H.ノーマン:スパイと言われた外交官 [木戸幸一その1] 

対米戦争の開戦責任に関する論議は終戦当初から有り60年経ってもなお続いている。それは私の現代史復習のテーマの一つでもあり、以前に『日米開戦と近衛文麿の責任』を書き、「軍部の責任ももちろん大きいが、日本を破滅に導いた最大の責任者は近衛文麿であ…

日米双方から撮った硫黄島の激戦                   

クリント・イーストウツド監督・渡辺謙主演の新作映画硫黄島からの手紙(Letters from Iwo Jima) を年末に観たが、実戦さながらの戦闘シーンはさすがハリウッドと圧倒された。昭和20年2〜3月、栗林忠道中将率いる硫黄島守備隊(写真1番目)は、100隻以上の米艦隊からの猛射の後、…

英国兵422人を救助した駆逐艦「雷」艦長         

新聞広告で興味をそそられ書店で手にとってみると、裏表紙は「ジャワ海を漂流中の英国兵の写真」で、書名は「敵兵を救助せよ!」、著者の恵(メグミ)隆之介氏は元海上自衛隊士官となっている。早速図書館で借りてきたが、第6章スラバヤ沖海戦が話の中心だ。大東…

小泉純一郎論                      

新刊「ニヒリズムの宰相・小泉純一郎」(御厨貴東大教授著、PHP新書)は、序章:三つのタブー(憲法・天皇・靖国)が無くなった、 第一章:選挙を好感度調査にした男、第二章:数の政治から劇場型政治へ、第三章:小泉内閣の歴史的な意味、第四章:なぜ小泉政治は面白…

松本健一の「Asian Common House」構想

松本健一氏(1946年生まれ、東大経済卒、麗澤大学教授、近代日本・アジア精神史研究の第一人者)は1998年中央公論社から発刊された「日本の近代」シリーズの第一巻「開国・維新」(黒船来航以来15年の動乱、日本人の英知と勇断を描く)の著者であり、保守派…

この国の価値を求めて            

中央公論7月号に「こんな国家で満足ですか」という特集があって、その中で『見失われた「この国の価値」を求めて』と題して京大教授佐伯啓思氏は、今日の日本のナショナリズムの課題を論じている。明確な回答ではないが、戦後状況下でかき消されてしまった固有の価…

日本も自主的な核抑止力を          

息もつかせず読まされてしまった新刊書に出会ったので、取るものとりあえず要旨をご報告したい。1953年生まれ、東大経済学部卒、コーネル大学で米国政治史などを学び、そのまま米国在住で各紙に外交評論と金融問題を執筆している伊藤貫氏著「中国の核が世界…

南京大虐殺のまぼろし                   

エドガースノーの名著?「中国の赤い星」(1937年)は毛沢東に利用されたプロパガンダに過ぎなかったと今では言われ、沖縄戦集団自決も「旧軍の命令で住民が自決した」とする従来の定説はほぼ否定されているなど、歴史の嘘が明らかにされつつある中で、亜細亜大…

沖縄戦集団自決の真実                     

曽野綾子氏の、沖縄戦集団自決の真相に迫った『ある神話の背景』は昭和48年に文芸春秋から出版された後PHPで文庫本化されたが、いずれも絶版となり入手が難しくなっていたという。この5月WAC文庫から『沖縄戦・渡嘉敷島−集団自決の真実』という書名で復刻さ…

「中国の赤い星」の嘘               

エドガー・スノーの著書「中国の赤い星」の初版は1937年に刊行され、中国のみならず世界中に衝撃を与えたようだが、1952年には日本でも出版され、毛沢東指導の中国革命を賛美して伝えたこの著書は日本の知識人層に大きな影響を与えた。高校時代にこれを読ん…