読書感想

「国益」を忘れた栗山論文の笑止  

元外務次官・駐米大使の栗山尚一氏が「外交フォーラム」2006年1・2月号に発表した「和解―日本外交の課題」について、産経新聞古森氏が「諸君」本年5月号で掲題のように批判している。8頁に及ぶ古森氏の文章を下記に要約する。これは私の考え方とほぼ一致する…

2月7日は北方領土の日          

ある感慨をもって切り抜いてあった昨年2月7日の産経新聞には、『7日は(択捉島までを日本領土と確認し合った)日露通好条約の締結150年記念日である。また今年は(未画定だった樺太をロシア領とし千島列島は日本領とした)樺太・千島交換条約締結130年、日露戦争…

金利引き上げと量的緩和              

ほぼ2年前に「円高阻止のドル買いは不適切」という短文を書き、「むしろ円高を素直に受け入れるべきで、内需中心に成長率が高まればおのずと輸入が増えて経常黒字が縮小し、国内投資家も海外投資のリスク余力が高まり、いずれ円高にも歯止めがかかる」という…

2.26事件は何故起こったか (渡部昇一新刊その2)

渡部昇一著「昭和史」を通読して興味を持った点が二つあり、一つは「その1」にまとめた「満州はシナではない」であり、もう一つがここで取り上げる2.26事件(1936年)の原因についてだが、私はこの点についても著者の見解に同感というか、さもありなんと感じて…

満州はシナではない (渡部昇一新刊その1)

渡部昇一氏の新刊「昭和史、大正末期〜226事件、松本清張と私」は、昭和39年から46にかけて週刊文春に連載された松本清張氏の力作「昭和史発掘」を遡上に載せ、要するに、共産党支持の松本氏の記述は「暗黒史観」を基調にした一面的なものであり、実際は当時…

昭和20年 春と夏                    

大東亜戦争敗戦から60周年の今年もあと残すばかりとなったが、もう一度当時を思い起こすべく、中央公論新社:日本の近代6−五百旗頭真著「戦争・占領・講和」(2001)の第2章「敗戦の方法」を読み返し、新たに書店で見つけた二冊に目を通してみた。一冊は藤原書…

明石元次郎                     

書店の新刊コーナーで「明石元次郎」を見つけた。野村敏雄著・ PHP文庫最新刊・日露戦争100年・日露戦争を勝利に導いた「奇略の参謀」とあり、裏表紙に「参謀・明石元次郎の活躍がなければ、対露戦争に日本は敗れていた!? 遠き欧州の地でロシアの後方を撹乱…

中国に社会主義は必要だった?

「中国は社会主義で幸せになったのか」という興味をそそる書名のPHP新書新刊がある。著者は57歳の立命館大学教授で中国近現代史専門の北村稔氏。 清朝末期から始まった中国国内の政治変動を背景にどのような経緯を経て中国共産党が出現して政治権力を掌握し…

ドイツ国防軍の犯罪           

日本の戦後処理について、同じ敗戦国であるドイツとの比較がしばしば指摘される。韓国の盧武鉉大統領は「ドイツが如何に戦争の傷を癒し、克服するのに成功したか。それに引き換え、日本人は侵略戦争を正当化している」と語り、中国も日本には繰り返し「歴史…

政治家よ 国を危うくするなかれ               

靖国参拝問題に対する我が国政治家の昨今の不勉強で軽薄な発言について、産経新聞論説委員長・千野境子氏が、今朝(6月10日)の一面で慨嘆している。掲題はその見出しである。氏は、1967年早稲田大学第一文学部(ロシア文学)卒業、同年産経新聞入社、各部を経て…

関東軍将兵のシベリア抑留                

大阪駅近くのジュンク堂書店の現代史コーナーに久し振りに行ってみて、めずらしい新刊書を見つけた。著者はロシア科学アカデミー東洋学研究所日本問題上級研究員・カタソノワ女史、ロシアで2003年に出版され日本では2004年10月に刊行された『関東軍兵士はなぜシベリアに抑留されたか――…

経済成長神話からの脱却                    

GDPの対前年伸び率が1%では低く、不良債権処理の目途が立つ迄はやむを得ないが、我が国としては3%が必要だとか言われる度に、そしてその為には消費の拡大がポイントだと言われる度に、これ以上何を買えって言うのだと違和感を覚えずには居られず、もっと…

櫻井よしこ、劇的な半生                      

才色兼備のオピニオンリーダーとして更なる活躍を陰ながら期待している櫻井よしこ氏、若き日の悩み・苦しみ・葛藤と真摯に向き合った回想記が刊行されたが、読み応えのある好著である。 日経ビジネスの新刊紹介欄でのインタビューで著者は『父は仕事一筋で母と子供を置き去…

第四次世界大戦                      

丁度二年前にPHPから初版が出版された、日高義樹著『アメリカの世界戦略を知らない日本人――「イラク戦」後、時代はこう動く』の各章表題を列記すると、●イラク戦争が世界を変える ●日米安保の時代が終わる ●「次はお前の番だ、キム・ジョンイル」 ●当分北朝…

ブッシュ政権とイラク戦争               

表題は新刊『ウルカヌス(VULCANS)の群像』という600頁近い大著の副題だが、著者J.Mannは米戦略国際研究センター所属のライターで、100件(人)を優に超すインタビューを行なった上で本書を執筆している。以下は主として「日本語版への序文」「はしがき」「む…

仕組まれた?日露戦争                       

1988年に東洋経済新報社から出版された、ウッドハウス暎子著「日露戦争を演出した男モリソン」が昨年末に新潮文庫になり、仕組まれた日露戦争を検証する画期的労作、との事なので早速読了、以下は読後感である。まずモリソンだが、1862年生まれの豪州人、1897から…

2.26事件は何故起こったか (渡部昇一新刊その2)

渡部昇一著「昭和史」を通読して興味を持った点が二つあり、一つは「その1」にまとめた「満州はシナではない」であり、もう一つがここで取り上げる2.26事件(1936年)の原因についてだが、私はこの点についても著者の見解に同感というか、さもありなんと感じて…

胡錦涛への登小平の遺言                        

1992年6月胡錦涛を自宅に呼び中国統治の要諦を伝えたとされる逸話を纏め、2003年香港で出版された原題「遺嘱(遺言)」の最終章の邦訳コピーを入手したが、以下がその要約である。 まず(1)勝g小平は現在の政治体制に非常に不満で、最も欠けているのは「民主…

日本の戦後は終わっていない              

上坂冬子氏の「北方領土に本籍を移して」と題する講演を聴いた後「北方領土上陸記」(文芸春秋 2003)なる著書を読んだ。ワシントンタイムス記者・戸丸広安氏の「知られざる北方領土秘史」も併せて、北方四島に関する私見を纏めてみる。四島のソ連不当占拠を…

樺太は日本固有の領土?                     

「日露領土紛争の根源」というユニークな書(長瀬隆著、草思社、2003年)によると、「樺太の南半分は日露戦争の勝利でロシアから獲得したものの、第二次世界大戦の結果ソ連に返還された」事になっているが、そうではなくそれは本来日本領土だったというのだ…

ポーツマス会議の人々                    

今年は日露戦争開戦100年と言う事で、新聞雑誌に紹介される回顧記事が多くなって来たが、私も昨年秋刊行の「日露戦争100年――新しい発見を求めて」(松村正義著、成文社)を参考に、開戦直後に金子男爵を米国に派遣して対日友好ムードの醸成を図り、米国によ…

占領時代の呪縛                   

現在の我国社会の国家観の無さ、自虐史観充満の情けなさはどこから来るのかを探るべく、近現代史を読み直そうと一念発起してから一年半が経ちましたが、参考になる教科書は以下のとおりでした。通史としては、中央公論新社「日本の近代」の第一巻から六巻ま…

対論−日本とアメリカ                  

掲題の書名は、長い間日本外交の中枢にあり、退官後も活躍中の碩学岡崎久彦氏と、20才若い阿川尚之氏との対談書(廣済堂出版 2002)であるが、その第六章:占領時代と東京裁判を考える、は私の今の読書の中心テーマでもあり、以下にその章の要点を記す。現代…

二十一世紀の日本の国家論

「あうろーら」という季刊誌の最終号(2000.7)に、坂本多加雄氏(昨年若くして死去された)の掲題の論説がある。 全く同感であり、昨今のTVによく出て来る社民党のおばさん連中に読ませたいといつも思っています。 下記はその要旨。 読売新聞のアンケート調…

国のあるべき姿に覚醒し始めた日本        

平成14年4月26日の産経新聞正論欄に、「主権回復50周年」の記念日に、と題する東京大学名誉教授小堀桂一郎氏の主張が掲載されており、その要旨は次のとおりである。 「今年も4月28日が近づいて来た。昭和27年のこの日はサンフランシスコ平和条約…

フランクフルト学派                

月刊誌「正論」(平成15年8月号)に「日本のメディアを支配する“隠れマルクス主義”フランクフルト学派とは」と題する東北大教授田中英道氏の興味深い啓蒙記事がある。TVの各チャンネルでニュース解説などを勤めているキャスター達の何人かは隠れマルキスト…

病むアメリカ、滅びゆく西洋            

掲題は、アメリカでは知らない人のない保守派の大物パトリック・ブキャナンの著書The DEATH of the WEST [How Dying Populations and Immigrant Invasions Imperil Our Country and Civilization ]の邦訳書名(監訳者:宮崎哲弥)である。 目次や小見出しを拾い上げると…

呪縛を解き放とう               

「骨抜きにされた日本人」(副題:検閲・自虐・そして迎合の戦後史)という衝撃的な書名の本が2002年にPHP研究所から刊行されている事を知り、阪急梅田の紀伊国屋書店で探したが見つからず、新刊なのに変だなと思いながら手続きをして取り寄せてもらった。著…

何時になったら普通の国になれるのか      

中央公論新社2001年発行の<日本の近代6>「戦争・占領・講和」は日本政治外交史・日米関係論専攻の神戸大学法学部教授五百旗頭真氏の書き下ろしであり、420ページで日米開戦の1941年から戦後10年の1955年迄を対象とするバランスの取れた公平な内容の良書で…

パール博士顕彰碑を訪ねて                  

昨年10月のA4短文「日本近現代史を読み直そう」で東京裁判の参考文献を紹介したが、その一つ「パール判事の日本無罪論」(田中正明著・小学館文庫)の247頁に、1997年京都東山に建立されたパール博士顕彰碑の写真が載っている。いつか行ってみようと思ってい…