米国は「日本の核武装」に異論なし 

掲題は月刊誌Voice 3月号掲載の、日高義樹論文の題目であり、以下はその要約である。
 キッシンジャーは言う、「日本のような大国がなぜ核兵器を持たないのか。もっとも日本が核を持とうとすれば、世界中と難しい政治的やりとりが必要にはなろうが」。フェイス元国防次官・パール元国防次官補らが一致して、「日本が核兵器を持つ事に異存がない」と述べた。2010年の中間選挙で大勝した共和党の下院議員らも、口を揃えて「日本の核武装憲法改正は、米国が口を挟むべき問題ではない」と述べた。シュレジンジャー元国防長官は「日本に核兵器を持たせない事は米国の核拡散防止戦略のいわば象徴だったが、今や世界は大きく変わった。核兵器を持つかどうかは日本が決めればよい事だ」と述べた。このような対日政策の大変革の背景は何か。
 ソビエトとの核戦力をめぐる冷戦に勝った米国が、核戦略体制を見直し始めたのは2008年だった。ソビエトという強大な軍事大国を相手にする為に、米国はしゃにむに核兵器を増強して来たが、相手があっと言う間に消滅したので、今や米国議会・国防総省ホワイトハウスの合同作業として、シュレジンジャー元国防長官らが米国の核戦略の整理・縮小に取り掛かったのだ。
 ソビエトが崩壊し、大戦車軍団を送りこんで欧州を占領する恐れはなくなったものの、冷戦後の国際情勢は、新たな危機をはらみ始めており、これに対応する戦略体制を作らなければならなくなっている。それは単にテロ攻撃対応といった問題だけでなく、それまでソビエト核の傘の下にいた国々が自ら核兵器を持とうとし始めたからだ。北朝鮮ソビエトの衰退を見て、核の傘があてに出来なくなると考え、独自の核開発に取り掛った。イランもそうであり、ともにパキスタンの協力を得て、独自の核の傘を持ち始めたのだ。こうした動きの中で、米国が核戦略について考え始め、核の傘についてもこれまでのやり方を変えようとした時に起こったのが、日本の民主党政権による「核持ち込み秘密協定の暴露」だった。米国が世界的な核戦略を再構築しようとしている最中に、岡田外相は「米国の核兵器は必要ない」と発言し、イデオロギーにのみ基づく軽率な行動をとってしまったのだ。米国の指導層が掌を返したように日本に冷たくなり、「核兵器を自分で作ってはどうか」と言い出した。シュレジンジャーは「日本が平和憲法を変えるかどうかは、我々が口を出すべき事ではない。だが、その前に日本が解決すべきは、核兵器をどうするかと言う問題だ」と言う。日本は今や米国の核の傘から放り出されそうになっているという事なのだ。余計な混乱を巻き起こしたくないので、もちろん米国はわざわざ口に出して言わないが。
 日本の核武装を論じる前に考えるべき大切な問題がある。それは、日本が経済的にも政治的にもアジアで独立を維持し、世界的な貿易を行なっていく為に採るべき最良の道はどれか、という問題である。その際見過ごしてはならないのは米国の力量である。日本の進歩的と言われる学者・評論家がしきりに「米国の没落」を唱え、中国が世界の指導者として力を持ちつつあると考えているが、そんな事はなく、米国は建国から独立戦争大恐慌・日本との戦争を経て世界に君臨して来たのであり、それらに比し現状の危機は十分乗り越えられると、米国の指導者達は考えている。日本の採るべき最良の道は、米国の核の傘がなくなろうとしている今、自ら核武装を行ない、米国との同盟体制を再構築・強化することだ。北朝鮮核兵器国家になれば、台湾や韓国もそうなる、イランがそうなればサウジ・エジプト・シリアなども追随する。世界の安定と安全の為に経済だけでなく、軍事的にも強い日本が必要なのだ。日本の核武装は目的でなく、安全な世界を作る為の日米同盟の基盤であり、始まりである。核武装につき日本人は冷静に考えるべき時だ。