日米同盟崩壊 

掲題は元アメリカ陸軍大尉の新刊著書の題名である。著者・飯柴氏は日本人であるが以下のように大変ユニークな経歴の持ち主だ。1973年東京生まれ、19歳で渡米、北ミシガン州立大学に入学し、士官候補生コースの訓練を終了。1999年永住権を得て米陸軍入隊。2002年よりアフガニスタンにてタリバン掃討作戦に従事。2008年に大尉に昇進し、情報担当将校として活躍。日米合同演習では連絡将校として自衛隊との折衝にあたる。除隊後、アラバマ州トロイ大学大学院で、国際政治学・国家安全保障の修士号を取得。現在米国在住で、軍事コンサルタントとしても活躍。
1. 第1章「日米同盟は最長でも2050年で終わる」では、?「影のCIA」と呼ばれているあるシンクタンクの報告書に「日米同盟は2025年にはなくなっている」 ?米国の保守派を中心に、日米安保は日本が利益を得ているばかりで、米国にとっては割に合わない取り決めだという意見が強まっている。?思いやり予算について、日本側は「払ってやっている」と言う意識だが、米側は「守ってやっているのに、なんてふざけたネーミングだ」と言う話になる。?日本が次期主力戦闘機として熱望していたF-22を、米国は売却しなかったが、機体の維持も含めて費用は膨大で予算が続かないと見られたし、軍事機密を守るシステムが未確立とみなされたそうだ。などが記載されている。相互信頼が失われているのを筆者は改めて感じる。
2. 第4章「米国の本音、中国の野望、日本の迷走」では、まず中国の野望だが、彼らが21世紀に欲しいのは、西はインド洋から東はハワイまでの広大な制海権であり、13億人もの国民に富を分配しながら経済成長を続けて行く為には、アフリカ・中東・東南アジア・オーストラリアのエネルギーをがぶ飲みし続ける事が必要で「マラッカ海峡はオレのもの、東シナ海もオレのもの、米軍には、ハワイまで戻ってくれ」が中国の本音だ、と著者は言う。これに対し米国は、もはや叩きつぶせる相手ではなくなった中国に対し、種々の牽制を始めている。クリントン国務長官は、「米中関係は呉越同舟」と言っているが、今後の対中戦略を綿密に練っていると言う。民主党政権に代わった日本に対する米国の評価は、米国への直接的な害はないものの、本当に信頼出来る同盟国ではなくなって来ている、と思い始めている、ただ、対中国のパワーバランスを考えた時、今は意味があるので同盟関係を維持しているが、これから先は分からないなと言うのが米国の本音だ、と著者は言う。
3. 第5章「中国の属国にならない為には」で著者は次のように提案する。日本が最も警戒すべきは台湾有事だが、日本に常駐の米海軍第7艦隊及び沖縄の米海兵隊とのパワーバランスに負けている今、中国は出て来ない。しかしこれから先中国は、自分の方が勝っていると思えば、一気に出て来る。その時日本に出来る事は何か。米国が中国の動きを阻止しようと動く時、それを支援し、かつ与那国島石垣島西表島宮古島自衛隊を分屯させ島嶼の守りを固めるのは当然だが、台湾有事を想定した日・米・台合同の実動演習を行って不測の事態に備えなければならない。一方、イタリア憲法を手本に我が国憲法を進化させ、?自衛隊でなく国防軍とする、?国際貢献に参加して実戦経験を積む、?我が国への侵略に対しては断固戦う、?中国の太平洋への進出を阻止すべく空・海の防衛力を拡充する、そして?「米国との同盟関係を維持しながら少しずつ自立する」を国家戦略とする事だと著者は結ぶ。日本人として米軍将校と生活を共にした著者の体験からの現実的提案であり、筆者は共感を覚える。一日も早く平和ボケから覚め、「自分の国は自分で守る」を全国民が共有すべきである。