ほぼ当たっているメア氏発言

国務省日本部長で元沖縄総領事のケビン・メア氏の「ごまかしとゆすりの名人」発言は、決して嘘を言ったわけでなく、実態はそれに近かったのだから言われても仕方がなかろう、と私は思う。一般庶民の多くはそうでないかも知れないから「沖縄人」でなく「沖縄の政界・業界の人は」と主語を限定した方が良かったかも知れないが。私は昨年夏、元防衛省事務次官・守屋氏の著書「普天間交渉秘録」を読み、その歯に衣着せぬ卒直な筆致に驚き、別紙のようなメモを書いたが、著書にある「ごまかしとゆすり」の事例から二点を転記すれば以下のようになる。?当時の稲嶺知事は「普天間返還時の代替施設の県内移設を容認して、辺野古沿岸地域で政府と合意」しながらも、推進を急ぐ守屋氏に対し協力するどころか引き延ばしを図った。?海上建設は環境派の反対で実現不可能というのが一般常識であり、守屋氏は出来るだけ陸上にという案でまとめる努力をしていたが、沖縄建設業界の沖泊氏は必死に海上埋立案を作成し、沖縄県・名護市が米政府・自民党・外務省にアッピールして回った。代替施設が短期間に完成せず延びれば延びる程、国のお金が長期間沖縄に投入されるわけで、??共に「ごまかしとゆすりの典型例」と私は思う。
 今朝の産経新聞菅首相に申す」で櫻井よしこ氏は「メア発言の真意」と題して書いているが、メア講演を6点に要約し、もちろんその一つ「……の名人」については、侮辱であり許されないとしつつ、なぜこのような発言になるのかの三つの背景を具体的に解説している。まず、09年4月の「在日米海軍掃海艇2隻の石垣港入港(乗組員の休養と地元との交流)」についてだが、当時の石垣市長は、日米地位協定で認められている入港にも拘わらず、これを拒否し非常事態宣言で応じ、また「八重山地区労働協議会」・各地区の「九条の会」など8団体は、「軍服を着て市街地を歩く事は許さない」などと大反対した、と言う。同じ頃反対派約300人が港に押し寄せ、ゲートを封鎖、メア氏らは7時間半も封じ込められたそうだ。次に、この事件を琉球新報など沖縄のメディアはどう伝えたか。中国の軍事的台頭で、沖縄を含む日本の周辺状況は非常に厳しくなっている折、その脅威の実態と対処をこそ伝えなければならないにも拘わらず、本来の報道の責務を果たさず、中国の蛮行に目をつぶった。石垣島周辺の日本領海を中国の潜水艦が侵犯した時、市長が強く抗議した事は無かった。同盟国と、脅威をもたらす潜在敵国が判別出来ていないと櫻井氏は当時感じた、などなどを挙げ、メア氏ら米国側関係者が同様に感じたとしても不思議でないと氏は言う。最後に、沖縄県と県民がメア氏から不名誉な言葉を投げかけられる隙を作った責任の大半は、実は本土政府にある、と櫻井氏は言う。沖縄の基地が必要な理由を、日本政府は国防論・国際政治論から論じて来なかった。国防政策に基づいて説明し、沖縄の人々を説得すべきところを回避して、常に物・カネでごまかして来たのだ。
 さて櫻井氏の要約の残りの5点は、(イ)日米安保は非対称――米国は日本を守らねばならないが、日本には米国を守る責務なし、(ロ)集団的自衛権憲法問題でなく政治問題だ、(ハ)日本の民主党政権は沖縄を理解しておらず、沖縄とのパイプ無し、(ニ)鳩山前首相は左派の政治家だ、(ホ)日本国憲法9条を変える必要はないし、変わるとも思えない、である。メア発言の(イ)〜(ニ)は大体当たっていると櫻井氏は言うし、私も同意見だ。ところで(ホ)だが、自国の守りを他国に頼る日本への最も深い侮りは正にこの部分であり、これこそを菅首相は取り上げて、強く抗議しなければいけないと櫻井氏言う。沖縄県議会が痛い所を突かれて慌てるのはやむなしとして、政府首脳が米国に声高に抗議するのは、自らの責任を棚上げした発言であり、私は少々恥ずかしい思いだ。