米国との対等な関係

産経新聞朝刊に「ハロランの眼」というコラムがあります。執筆者はリチャード・ハロラン氏で、氏は1960〜70年代にワシントンポスト紙やニューヨークタイムズ紙の東京支局長を歴任したようですが、今年80歳で、現在はハワイに在住し執筆活動中のようです。日付けは不詳ですが、最近のコラムで氏は「対等な日米関係へ10の提言」をされています。鳩山首相が就任以来主張している「米国との対等な外交・安保関係」を念頭においた提案で、要約すると以下になります。
1 自身の防衛に全責任を持て 現在その大半は米軍がやっている。まず、日本に「国際紛争を解決する手段として」の「武力の行使」を禁じた憲法9条を改正する必要がある。
2 海上防衛力を強めマラッカ海峡を守れ 今は、おおむね米軍が守っている。マラッカや南シナ海は、原油やその他資源の日本への輸送に死活的に重要な海上交通路である。
3 米国防衛を日本も義務とせよ 今日本には米国防衛の義務はない。米国が日本の防衛を余儀なくされているのとまさしく同様に、米国が攻められたら日本は助けに来なければならない。
4 防衛費を4倍増せよ GDP対比の防衛費は、日本が1%以下だが米国は4%である。
5 自衛隊隊員を3.5倍にせよ 自衛隊隊員は現在24万人(定員)だが、軍人の総人口比を米国と同じにするなら、3.5倍の88万人になる。
6 日本から殆どの米軍を追放せよ 鳩山氏に近い助言者である寺島実郎氏は米軍のグアム・ハワイ移転を提唱している。
7 米国の核の傘を日本から外せ 寺島氏はそれを「明白な冷戦の遺物」ととらえ、代わりに、日本としてはオバマ大統領が唱導する核兵器なき世界をあてにするよう勧めている。
8 ミサイル防衛の開発を米国から引き継げ 
9 自分で世界情報を収集分析せよ 現在日本は、内閣付属の不十分な調査室と、米国が自発的に分け与えている情報に依存している。対等なら、米中央情報局(CIA)、英情報局秘密情報部(MI6)のような部門を創設し、自ら収集分析するようにしてはどうか。
10 国際交渉の先頭に立て 日本は過去半世紀にわたって交渉の厄介な仕事を米国・欧州・中国に主導させて来た。対等たらんとするなら、進んで外交上のリスクを取らなければならない。
 鳩山首相は、「日本は米国とアジアの懸け橋」になると繰り返しているが、鳩山氏が求める対等な関係が達成された暁には、「台頭する中国とよろめく米国」と、自らみなしているものの架け橋に日本がなれるかも、とハロラン氏は言う。しかし同時に、胡錦涛オバマのいずれも、相互の懸け橋の必要性を感じていない以上、それは傲慢かもしれない(よ)、とも。事実、杏林大学客員教授田久保忠衛氏は、産経新聞正論欄で『日本が懸け橋になる前に、頭上では米中の関係が深化している事実に気付かなければならない。オバマ政権下で中国はますます軍事面での国際貢献を進めている。国連のPKO(平和維持活動)やソマリア沖の海賊対策で後れを取っている日本は発奮するどころか、ますますカネで済まそうとする方向を走っている。鳩山内閣の意向に沿い、日本を国際的なATM(自動金銭支払機)にしてはどうかとの協議が米中でなされるかも知れない』と書いています。ハロラン氏の提言は、腹を立てているのか、かなり乱暴でキツイ提言ですが、要は「えらそうな事を言うな」という事でしょう。我国の能力と置かれた立場を正しく認識し、こんな恥ずかしい言われ方をされないよう、総理たるものはよくよく考えて国益第一で行動してほしいものです。とは言うものの、今なすべき事は即刻の辞職以外にないでしょう。